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「む…くろ」

「久しぶりですね。随分綺麗になっていたのでびっくりしましたよ」



隣にいたはずの美瑠がアイツの名前であろう言葉を口にする。
それに、嬉しそうに…優しくアイツは微笑む。
その雰囲気に二人の間にただならぬ関係があることを無意識に悟る。
…そして、渦巻くのは大きな黒い感情。

何でずっとアイツの方を見つめてるの?
何でそんな切なそうな声であいつの名前を呼ぶの?

何で……泣いているの?



「クフフ。相変わらず美瑠は泣き虫ですね」



泣いている美瑠の涙を拭うためか、…美瑠に近づくためすっとアイツが立ち上がる。

…っ!ダメ。絶対に、美瑠には近寄らせない。

僕は庇うように美瑠の前に立つ。



「…!やれやれ。どうやらナイトがいるようですね」



僕の行動に奴はストンとソファーに腰を下ろす。
でもその態度は僕を暗に「邪魔者」だと伝えてくる。
その態度がますます癇に障って、苛々した。…でも、その感情を表に出すほど未熟じゃない。



「ずいぶん探したよ。君がイタズラの首謀者?」

「クフフ…そんなところですかね。そして君の街の新しい秩序」

「寝惚けているの?並盛に二つ秩序はいらない」

「まったく同感です。僕がなるから君はいらない。
それに美瑠の隣にいるべきなのは僕だから」

「それは叶わないよ。君はここで咬み殺す」



チャキっという音とともにトンファーを構える。

美瑠は僕のものだ。…渡さないよ、誰であろうと。



「美瑠はさがってて」

「恭弥…」



私を庇うようにして立つ恭弥に私は名前を呼ぶことしかできなかった。

駄目なの。恭弥じゃ勝てない……
骸は今まで戦ってきた不良の人達とはわけが違う。
本物のマフィアであり、本当に…人を殺したことのある、人。

恭弥は確かに強い。…でも、人を殺したことはない。
そして、この差は大きい。
人の強さが経験に比例するわけではないけれど、覚悟が違いすぎる。
この戦い、恭弥は確実に怪我をするし、…下手をしたら殺されてしまうかもしれない。
そんなこと、私がいる限りさせないけれど私で骸を止められるのだろうか……

戦ってはダメ。そう言いたいのに涙が邪魔して言葉が出ない。
そうしている間に恭弥の背中が離れていってしまう。

待って…お願い、恭弥っ…!



「ごめん、美瑠」

「っ!?」



謝罪の声の後にすぐトンっと首に衝撃が走る。
恭弥と骸に気をとられすぎて他にいるはずの犬と千種の存在を忘れていた。
警戒しておくべきだったのに…!
しまったと思ったときには遅かった。



「け…ん……」

「ごめんびょん。美瑠」



意識が薄れる前に見たのは驚きに目を見開いた恭弥に、哀しげな犬、…そして、嬉しそうに笑う骸だった。

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