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「美瑠っ!」
後ろから突然現れた男に気絶させられた美瑠はそのまま僕の側を離れて目の前の男の手に渡る。
奴の手が美瑠に触れていると思っただけで苛立ちが募る。
…それに、僕自身にも苛立ちが燃え上がる。
何で美瑠の側から離れたんだ…っ!
あんな奴に美瑠を奪われるなんて……っ
アイツを咬み殺して美瑠を遠ざけるしかない。
そう計算したと同時にトンファーを握る力を強めた。
「座ったまま死にたいの?」
「クフフフ。面白いことを言いますね。
立つ必要がないから座ってるんですよ」
余裕綽々。そんな言葉が似合うような言い方で笑う男にむかつきがさらに増す。
…へぇ…中々言うじゃない。なめられたものだね。
この僕にそんな余裕な態度を見せるなんて。
でもいつまでもそんなに余裕でいられると思わないでよ。
「君とはもう、口をきかない」
「どうぞお好きに。ただ、今喋っとかないと二度と口がきけなくなりますよ」
アイツの言っている言葉全てが僕の神経を逆撫でする。
…なのに、何故か僕の中に嫌な予感が過って、ぞくりと身体が震えた。
何…?何でこんなに冷や汗が出るの?
(僕が、アイツに気圧されてる…?)
(それとも、何か罠が……)
そんな僕の様子に気づかないあいつじゃない。
…いや、あいつが何かしているからこそこんな嫌らしい笑みを浮かべているのか。
「ん――?汗が噴き出していますがどうかなさいましたか?」
「黙れ」
「せっかく心配してあげてるのに。
ほら、しっかりしてくださいよ。―――僕はこっちですよ」
一歩踏み出すとアイツはいつの間にか僕の横に座っていた。
…まるで最初からそこに座っていたかのように。
それに、先ほどから感じる違和感。そして不快感。
どうしたんだ…?すごく気持ち悪い…っ!
(まるで、あの時と同じ…)
(そんなわけ、ない。今、この場所で、…あるはずない)
そう思っていても必死に意識を保とうとする僕をあざ笑うかのようにアイツは歪んだ笑みを見せる。
「海外から取り寄せてみたんです。
クフフフ…本当に苦手なんですね。―――桜」
綺麗な薄紅色の花びらがひらりと舞う。
その美しさとは反対に僕からは自然と力が抜けてガクッと膝をついてしまった。
…その美しさが忌々しい。
しかし今は膝をついてしまったことよりも驚きと不快感で眉を顰める。
どうして…僕があの忌々しい医者にかけられた病気を知っている…!?
僕のそんな疑問を読んでいながら、奴はわざと無視して僕を嘲笑う。
「クフフフ、いい眺めですね。
君に2、3聞きたいことがあります。
美瑠とはどういう関係です?やけに親しそうでしたけど」
「………」
美瑠は僕にとって世界でたった一人の大切な女の子。
…そして美瑠もそう思ってくれている。
(そう信じてる。自惚れなんかじゃなくて)
でもそんなの、こいつに言う義理はないし言いたくない。
僕が口を割るつもりがないことを悟ったのかやれやれ、と奴は肩をすくめた。
「なら、君はどこのファミリーですか?」
「………」
ファミリー?そんなの、知らない。
美瑠は沢田綱吉たちをファミリーだって言ってたけど……
僕はそんな群れに入った覚えはない。
やはり無言を貫く僕に何も知らない、または興味がないことを悟ったのか再び奴は肩をすくめた。
「その様子ではハズレのようですね」
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