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「ぐすっ…ありがとう」
「いいえ。いいですよ」
不思議だった。
今まで人間なんて醜いものだと思っていた僕が目の前の少女を抱きしめてなぐさめている。
興奮していた神経が少し収まったのか少女は少し涙目で見上げた。
ふとした瞬間に目が合う。
その時僕は初めて“一目惚れ”という体験をした。
愚かなものだと思っていたのに。しかし、理屈じゃない。
とくり、と凍り付いていたはずの心の奥がゆっくり溶け出して、動いていくのがわかる。
少女は静かにじぃっと見つめる。
ただそれだけなのに骸の心臓が高鳴った。
「綺麗なオッドアイ…青空みたい。でもこっちは綺麗なサファイヤだね」
初めて、彼女の笑顔を見た。
今まで向けられたことのない純粋な、笑顔。
それにこの忌々しい目を綺麗だと言われたのも初めてだった。
「綺麗、ですか?」
「うん」
笑って頷いた彼女は心から「綺麗だ」と、そう思ってる。
ただのお世辞ではない言葉。
今までは上辺だけの言葉ばかりを聞いていたから、こんなにも真っ直ぐな言葉は初めてだった。
(目を見ればわかる…)
(綺麗な…穢れをしらない目だ)
「僕は…あなたの目の方が綺麗だと思いますよ」
「私…?そうかな?」
普通だと思うけど…。
そう呟いた彼女の目はイタリアでは珍しい、真っ黒に藍色が混じったような…夜空のような瞳だった。
色もそうだが、彼女の澄んだ瞳のことを言ったのだが、彼女はそうは思わなかったようだ。
その瞳を純粋に美しいと感じて、…美しいと褒めれば、彼女は本当に嬉しそうに笑う。
最初は醜い人間たちを見て、不愉快だったからだった。
別にこの少女を助けたかったわけじゃない。
でも今間違いなく、この少女の笑顔に惹かれている。
「名前を、聞いていいですか?」
「美瑠だよ、彼方美瑠」
「!」
その名前を聞いて、思わず小さく息を飲み、世の中で「神」と呼ばれる存在をあざ笑いたくなった。
彼方美瑠というのは、あの巨大マフィアであるボンゴレの姫の名前だ。
彼女がマフィア…?
僕が今まで憎くて、憎くて、滅ぼしたいと思っていた……
「あなたは?」
無垢な笑顔。…マフィアとは思えないほど、純粋な心。
目の前の彼女は自分の今までを知らない。
…マフィアを憎んでいることも、何も……
そう思うと滑稽だったが、何故かこの少女を笑うことができなかった。
マフィアは憎いが……美瑠はそう思えない。
むしろ……―――
「六道骸です」
自然と微笑みながら自分の本名を名乗っていた。
作った笑顔でも、嘲笑でもない、愛しさのにじんだ笑顔。
(自分でも、こんな笑顔ができるなんて知らなかった)
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