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「ねぇ、何してるか聞いてるんだけど?」
「あっ……えっと…!職員室に行きたいんですけど、どこかわかんなくて…!」
な、なんで私こんなに緊張してるの!?
相手は普通の……ちょ、ちょっと普通じゃないかもしれないけど、昨日会ったばっかりの男の子なんだよ…!?
敬語使う必要もないだろうし、こんなに緊張する必要もないはずなのに……
なんでこんなに焦らなくちゃいけないの…!?
でも混乱する頭の中、目だけは彼の綺麗な黒目を見つめていて、彼の一挙一動を見逃さないようにしてる。
……不思議、だよね………
「…そう」
彼は少しだけ目を伏せてそう一言だけ呟いた。
なんだか…私が脱力。こんなに緊張して損した気分…?
複雑な思いをしていると彼は静かに私の横を通り過ぎていく。
その姿を目で追っているとピタリと急に彼の足が止まった。
止まったけれど、私には視線は向かわず。
その場にただ立っているというような感じだった。
「来ないの?」
「え?」
「…職員室。行くんでしょ?」
「……っ、はい!」
彼は何も言わずそのまま足を進めてスタスタと歩いていく。
私は彼を見失わないようについて行くと…目を疑った。
だ、だって……ね?彼が歩くところ全部人が避けていくんだよ!
顔を真っ青にしながら道をあけていくんだけど。
この人……何者?
普通の人じゃないよね。昨日の男の人も一回で殴り飛ばしてたし。
でも何故か悪い人には見えないんだよね。
畏怖の目で見られる彼の後をついて行って、ようやく職員室らしきところまで辿り着く。
やっと着いた…!
嬉しくて涙でそうだよ……なんて大げさなことを考えていると彼の足が止まった。
「ここだから」
ありがとうございました、と言う前に彼は颯爽と去っていった。
まるで嵐のようで……雲のように気まぐれ。
その背を黙って見送って、私は職員室へ入っていった。
突然入ってきてしまったのがいけないのか、それとも転入生が珍しいのかわからないけどたくさん視線を感じた。
マフィアだからかな…視線ってなんだか苦手なんだよね。
少しだけ居心地の悪さを感じながらも周りを見渡すとある先生と目が合う。
あ、と思えば先生は立ち上がってこっちに近づいてきた。
「待ってたよ。君が彼方美瑠さん?」
「はい。これからよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げるとこちらこそ、と小さく微笑みながら先生も軽く頭を下げる。
やっぱり日本人って礼儀正しいよね。
顔をあげれば先生の少し満足そうな顔が目に入る。
……優秀な、礼儀正しい、優等生だって満足してる、顔。
こういう顔は正直苦手。私のこと何も知らないのにって思ってしまう。
小さく苦笑すると先生は数枚の書類を持ち上げた。
「これからSHRだ。そこで紹介するな」
「はい」
「SHRが終わったら……風紀委員長に挨拶しに行ってくれるか?」
思わず反応がワンテンポ遅れてしまった。
予想外の言葉って言うのはこういうことだと思う。
だって…風紀委員長、だよ?
生徒会長でもクラスの委員長でもなく、風紀委員長。
風紀って普通の委員会だよね…?
キョトンとしていると先生は慌てて言葉を紡いだ。
「何も聞かず行ってくれ……いや行ってください!」
「は、はい…」
思わず先生の必死さに引いてしまった。
何でこんなに必死になるんだろう…?
そういえばツナが不良だって言ってたから…そのボスってこと?
……そっか、先生達も怖いんだ…なんだか不憫かもしれない。
そう小さく苦笑すると先生はあからさまにホッとしたように息をついた。
「よかった…じゃ、クラスに行こうか」
先生は日誌を持って立ち上がり、少し古い椅子を軋ませる。
私ははい、と頷いて今更だけど緊張で背筋を伸ばした。
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