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「まずいですね」

「…ここにいすぎたようです」



居心地がよすぎた。…自分達が何をしてきたのかを忘れるくらいに。
追っ手がこちらの居場所をかぎつけたようだった。
このままここにいては危ない。
次の…他の土地に行かなければ……

―――でも離れたくない。
ずっと…ずっと美瑠と一緒にいたい……

三人の心の中に同じ願いがあった。



「どーしらす?」

「…離れるしか、ありません」

「いいのですか?骸様は、美瑠と…」

「仕方ありません…」



そう言ってはいるが骸の顔はこの上なく暗い。

わかっている。
ずっと一緒にいて、骸は美瑠のことが好き…いや愛している。
初めて大切にしたいと思った女の子なのだから…
…だからこそ離れたくないんだ。



「いつ、出ますか?」

「…明日、夜に」

「わかりました」



千種がこくりとうなずくと骸は何も言わずに部屋を出て行った。
その背中はいつも以上に哀しく感じられ、犬が不安そうにぽつりと呟く。



「柿ピー…いいんら?骸さん、後悔しない?」

「わからない…でも骸様が決めたんだ。オレはそれに従うよ」

「うん…」

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