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「美瑠ちゃんってハーフ!?」
「香水何使ってる?よかったら教えてーっ」
「メアド教えてよー!」
「え、えっと……?」
どれからどう答えればいいの…!?
えっとまずはハーフかって言うのから答えればいいのかな?
あぁでも香水のことも…って私、香水なんてつけてないんだった。
ビアンキに「女の子なんだから化粧道具の一つや二つ、持ってなさい」って言われて貰ったものならあるけど…あれってなんだったかな……
見たとき「これかなりのブランドで高いんじゃ…!」って思ったのは覚えてるんだけど……
って考えてる場合じゃないよ!ちゃんと質問に答えないと……
そう意気込むとおーい、と苦笑交じりの声が遮った。
「美瑠が困ってるだろ。一人ずつ言えって」
『キャ――――!』
「(今武、美瑠って呼び捨てにしたわよね!?)」
「(すごーい!もしかして付き合ってるの!?)」
「(いやー!でもお似合いだから何も言えなーい!)」
ど、どうしてそこで悲鳴が!?
しかも恐怖の悲鳴とかじゃなくて……黄色い声のたぐいの悲鳴が。
何かあったのかな!?
キョロキョロと辺りを見回してみたけど、変わったことは何もなくて。
結局、多分私一人がよくわからないまま頭の上にクエスチョンマークが乗っかっていた。
そんな私を一人置いて、本人――基、武は苦笑しながらも私をフォローしてくれる。
どうやらクラスでの武の信頼性は厚いみたいでみんなも苦笑しながらごめんね、と言ってくれた。
そんなみんなを見てるとなんだか私まで申し訳なくなってきて。
私も小さく苦笑まじりの、でも安心するように柔らかな笑みを浮かべた。
「別にいいよ。ちょっとびっくりしただけだから」
『(可愛すぎ…!)』
再び沈黙、そして顔を真っ赤にする嵐が巻き起こる。
沈黙っていうのがすごくいたいんですが…!
それに今日ってそんなに暑いかな?
確かに秋に近い夏っていう季節だけど……うーん。
私はそこまでない気がするんだけどな…?
首を傾げるとぱっと頭の中に黒い学ランが何故か思い浮かんだ。
あれ、なんでこんなこと思い出して……あっ!朝会った彼が首傾げる姿がすごく綺麗だったからだ!
その彼も学ラン着てたからそれで思い出したんだ。
うんうん、と一人納得しながら先生に言われたことも一緒に思い出して席を立ち上がる。
するとみんなが私を不思議そうに見つめてきた。
「どこに行くの?」
「風紀委員長のところだよ」
「風紀委員長!?」
ズサァァァっと波が引いていくように一気にみんな後ずさっていった。
わぁ、すごーい……じゃなくて!
なんでこんなに吃驚されないといけないの!?
しかもみんなしてすごく気まずそうに私から目を逸らすし、
中にはさっきまで赤かった顔が真っ青になっている人もいる。
そんなに怖がることでもない気がするけどみんなの反応は異常というか敏感すぎる気がした。
「美瑠ちゃん風紀委員長のところにいくの!?」
「うん、先生に言われて」
慌てたようにそう聞くツナにうん、と軽く頷く。
でもツナは更に焦ったような表情になって「やめた方がいいよ!」って言った。
どうしてやめないといけないのか、とかまだ並中に来たばかりの私に見当がつくはずもなく。
怖くないし、もし殴られそうになっても返り討ちにしてやるんだから!とまで思ってる私はそこまで深く考えずにニコリ、と笑った。
「大丈夫だよ。それに行くって先生と約束したから」
ちょっと行ってくるね、とだけ言い残して教室から出て行く。
その背にツナのどうしよう!という焦燥の声を聞きながら。
――――その噂の風紀委員長が『彼』だとは、夢にも思わずに。
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