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「目は覚めないのか」

「うん…これで、二日だよ」



赤ん坊が用意した個室に静かに寝ているのは美瑠。
呼吸器は外され、点滴しか打っていない。
でも、肝心の美瑠が目を覚まさないのだ。

他のやつは、とっくに目を覚ましたというのに。
もちろん僕もあの後すぐに目を覚ました。
絶対安静、なんて言われたけど、そんなこと無視した。

美瑠のことが心配だったから。


病室にはいるとたくさんの花束。

(男からの花束は全部捨てたよ)
(だって邪魔だし)

それからずっと側にいるけど目を覚まさない。
赤ん坊も心配して毎日美瑠の様子を見に来ている。



「美瑠は力を使ったって言ってたが……
天秤の力を使っただけで意識を失うなんて考えられねーな」

「…なら、何をすれば意識を失うのさ」

「さぁな。アイツにも聞いたがわかんねぇとしか言わねーし」

「アイツ?」



誰だ、とあからさまに眉を顰める。
…まさか男とか言わないよね、なんて心の狭いことを考えた自分に自嘲する。
そんな僕の心情に気づいたのか、赤ん坊は「安心しろ」と笑った。



「美瑠の、祖父にあたるやつだな」

「へぇ」



そういえば写真を見たことがあったな。
温厚そうな人だった。…それくらいしか、印象に残らなかったけど。



「じゃあ何で、」



その問いを口にした瞬間、ぴくっと美瑠の瞼が動く。

まさか…目を覚ました…?

僕と赤ん坊は期待を込めて美瑠を見つめていると、ゆっくりと美瑠の目が開かれる。
その瞬間に心を満たしたのは絶対的な安心感。

よかった…目が覚めたんだね……



「(ここは……、あれ…恭弥、とリボーン…?)」


パチパチ、とゆっくり美瑠瞬きして、僕と赤ん坊が目に入ったのか安心したような顔をする。
…まったく、君が安心してどうするの。
でも、その表情が美瑠らくしくて、僕は少しだけ笑いそうになった。

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