「貴方の名前は…?」

「雲雀恭弥。恭弥でいいよ」

「恭弥さん、だね」




恭弥……『さん』?

なんでそこでさん、なんて他人行儀なものがつくの。
……実際、彼女にとっては他人なんだろうけど、でも、面白くない。

だって昨日一緒にいた草食動物達のことはちゃんと名前で呼び捨てだったから。
自分でも少し大人げない、と思いつつも心は正直で自然とぶすっとしてしまう。




「『さん』、いらない」




彼女は一瞬だけキョトリ、としたが、だんだん顔を緩めていく。

あぁ…彼女にはわかってしまったんだ、僕が拗ねていること。
それはそれで悔しかったりしてますます拗ねてしまう。

すると彼女は軽く頬を赤く染めて(多分無自覚だろうね)羞恥からか少し目を逸らした。




「……恭弥」




―――ワォ。


なんだろう、名前を呼ばれただけなのにこんなにも胸が熱くなって、それなのに温かくて、擽ったいような、この、生温い感情は。

彼女、美瑠、は僕より顔に出やすい性格なのか先ほどよりもっと顔を真っ赤にしていた。
もうここまでくるとまるで熟れた林檎か苺だね。




「よろしくね、美瑠」

「…よろしく!恭弥」




余裕の笑み、なんてできるはずがなかった。
美瑠はまだ照れているようで少しはみかみながらもそう微笑みながら返してくれたから。

本当に、もう……可愛い。
兎に角可愛いしか出てこない僕の貧相な語彙にびっくりだけど、可愛い。
容姿的な可愛さ、ではない(いやもちろん容姿もそうなんだけど、)

なんていうんだろう…例えば子猫がいたら無性に頭を撫でてあげたくなるでしょ?
それは『可愛い』と思ったから頭を撫でてあげるからで……その時の『可愛い』と同じ気持ちなんだ。

…中々説明するのが難しい。

とりあえず顔を赤くする美瑠を見ているとこっちまでなんだか赤くなりそう。
意地でも赤くなんてなったりしないけど。

だって…格好悪い、でしょ?

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