「座ったら?少し話したいこともあるし」

「うん」




頷き、黒革張りのソファーに座るのを見届けて隣に備え付けてある給湯室に入る。
普段はあまり足を踏み込まない場所なんだけどね。
僕のお茶とかはたまに自分で淹れるけど、草壁が用意することが多いから。
それでもお茶の淹れ方くらいの心得はあるからお湯を沸かし始める。

美瑠の好みなんて知るはずもないからとりあえず紅茶を淹れた。
なんとなく、美瑠には緑茶より紅茶の方がいいような気がしたから。
香りもそこそこよくて、美瑠の前に置くとぱっと僕の方を見上げた。

…まるで僕が淹れるのが予想外、みたいじゃないか。
僕だって紅茶くらい淹れられるよ。
僕は自分の分を向かい側の席に置いて、ソファーに腰掛ける。
美瑠はそっとカップを持ち上げてこくり、と一口紅茶を飲んだ。




「……!おいしい!」

「よかった」




すごい、なんでこんなに美味しいんだろう、と僕には聞こえてないと思っているのかそんな褒め言葉を呟いていた。
その素直な褒め言葉に嬉しさを隠せず、緩んでいく口元を隠すためにカップを口元に持っていく。
一口だけ飲んでみるけどいつもとさして変わらない気がした。
やっぱり僕には緑茶の方があっているのかもしれない。

紅茶特有の渋みを感じつつ、静かにカップを置いて美瑠を見つめる。
美瑠には少し熱すぎたようでちびちびと口をつけていた。




「聞きたいことがあるんだけど」

「うん、何?」

「昨日何であんなことしてたの?」




銃使って、大の大人を倒したりして。

そう言葉を付け加えると美瑠はあからさまに、うっ!と言葉に詰まった。
銃を持ってること自体、普通じゃないし、あんな大人達を倒せるくらい強いんだから一般人でないのは確かだ。
それになんて言ったってあの赤ん坊の知り合い。
ただ者じゃないことくらい、わかっている。

でも美瑠は気まずそうに僕から目を逸らしてえっと、と言葉を濁した。




「それに見かけによらず強いよね」

「………(どうしよう…;)」




さらに追い打ち。

美瑠の動揺が手に取るようにわかる。
と、いうよりあからさますぎてわかりやすい。

キョロキョロと目はあちらこちらに泳がせるし、僕に目を合わせないし。
さっきからどう誤魔化そうか必死に考えているのが明白だった。

……こんな仕草されて、悪戯心を刺激されない人間なんて、いないでしょ?

本当は最初からこんなこと聞きだそうなんて思ってなかった。

ただ、少し興味があるから。

たったこれだけの理由で真面目に答えられないことを前提で聞いたんだ。
でも美瑠は僕の予想以上に純粋で真面目な子だったみたいだね。
嘘の付き方っていうのを知らない。
こんなに目を泳がせちゃ、誰にだって動揺していることがわかっちゃうよ。

クスっと笑ってまぁいいや、と話を打ち切る。




「その代り、風紀に入らない?」

「えっ!?」




今は聞き出さないであげる。
その代わり風紀に入ってくれるなら、ね。

そういう意味を含めると美瑠は驚いたように目を見開かせた。
僕が簡単に諦めるとは思っていなくて、さらに風紀に入ることも想定外、といったところだろう。

美瑠は風紀、とぽつりと呟いてそのまま考え込んでしまった。
きっとこの様子だと風紀委員の評判は聞いてるんだろうね。
ま、それだけ有名であることには間違いないんだけど。今朝も校門で立っていたしね。

美瑠は迷うような素振りをしつつうーん、と頭を悩ませていた。

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