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「美瑠、どこにいくんだぁ?」

「…スクアーロ……」

「いいのかぁ?見なくて」

「……っ」



本当は目をそむけちゃいけない。仲間が戦っているんだから。
辛いとき、一緒にいないといけない。わかってる。

でも……見たくないよ…っ
お兄さんが傷つくのを黙ってみとくなんて……もう、したくない。

(だからといって中に割って入ることのできない私は)
(なんて、弱虫で無力なんだろう)



「先に、帰ってるよ…」

「そーか。わかった」

「………」



スクアーロはとめなかった。私の気持ちをよんでいたように……

ベルたちにも何も言わず、私はみんなに背を向けて走り出した。
走らないと、気持ちが折れてしまいそうで……



「はぁ…はぁっ…はぁ……」



まだ耳に残る、お兄さんの声。

仲間の試合を見るのを放棄するなんて……

やっぱり私は天秤に向いてないよ…っ

すべての者を闇の中でも優しく照らし、導く『月の守護者』に……




「早かったな」

「…!XANXUS…」



ヴァリアーの屋敷の中に入るとザンザスがいた。
広い広い大広間にただ一人、机に足をかけて座っていた。

ここにいたんだ……



「あのカスどもはどうした?」

「…みんなはまだ並中にいると思うよ」

「…?お前、試合を見に行ったんじゃないのか」

「……、…」


ザンザスの言葉に、何も返せなくて軽く俯く。
…言えないよ…見ていられなくて、逃げてしまったなんて……

何も言わない私をザンザスはじっと見つめたが、ふいに視線を外す。



「まぁいい。ちょうど、美瑠と二人で話がしたかった」

「…!」



思いがけない言葉に、思わず私は勢いよく顔をあげて、ザンザスを見つめていた。

私と…話がしたかった…?あのザンザスが…?



「来い」

「…はい」



くるりと背を向けるザンザスに私は遅れてついていく。
扉をあけるとみんなの部屋より数倍広くて、豪華絢爛なザンザスの部屋に入った。

…よく考えたら、初めて入ったよ。



「座れ」

「…ありがとう」



ソファーに座るとザンザスは自分の椅子にどさり、と座った。
しかし、私とザンザスの間には沈黙しか下りない。

何話せばいいの…?
ベルやスクアーロなら話せるけど…話題が見つからないよ……

(恭弥なら、側にいるだけでよかった)
(あ、ダメ…恭弥のことを考えちゃダメだ…)



「お前、オレと初めて会った日のこと、覚えてるか?」

「初めて会った日…?」



ザンザスに言われて、思い出す昔の思い出。

もちろん覚えてるよ。イタリアのお祖父様の家で……


あの日はすごく天気のいい日だった――――

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