5
「美瑠、どこにいくんだぁ?」
「…スクアーロ……」
「いいのかぁ?見なくて」
「……っ」
本当は目をそむけちゃいけない。仲間が戦っているんだから。
辛いとき、一緒にいないといけない。わかってる。
でも……見たくないよ…っ
お兄さんが傷つくのを黙ってみとくなんて……もう、したくない。
(だからといって中に割って入ることのできない私は)
(なんて、弱虫で無力なんだろう)
「先に、帰ってるよ…」
「そーか。わかった」
「………」
スクアーロはとめなかった。私の気持ちをよんでいたように……
ベルたちにも何も言わず、私はみんなに背を向けて走り出した。
走らないと、気持ちが折れてしまいそうで……
「はぁ…はぁっ…はぁ……」
まだ耳に残る、お兄さんの声。
仲間の試合を見るのを放棄するなんて……
やっぱり私は天秤に向いてないよ…っ
すべての者を闇の中でも優しく照らし、導く『月の守護者』に……
「早かったな」
「…!XANXUS…」
ヴァリアーの屋敷の中に入るとザンザスがいた。
広い広い大広間にただ一人、机に足をかけて座っていた。
ここにいたんだ……
「あのカスどもはどうした?」
「…みんなはまだ並中にいると思うよ」
「…?お前、試合を見に行ったんじゃないのか」
「……、…」
ザンザスの言葉に、何も返せなくて軽く俯く。
…言えないよ…見ていられなくて、逃げてしまったなんて……
何も言わない私をザンザスはじっと見つめたが、ふいに視線を外す。
「まぁいい。ちょうど、美瑠と二人で話がしたかった」
「…!」
思いがけない言葉に、思わず私は勢いよく顔をあげて、ザンザスを見つめていた。
私と…話がしたかった…?あのザンザスが…?
「来い」
「…はい」
くるりと背を向けるザンザスに私は遅れてついていく。
扉をあけるとみんなの部屋より数倍広くて、豪華絢爛なザンザスの部屋に入った。
…よく考えたら、初めて入ったよ。
「座れ」
「…ありがとう」
ソファーに座るとザンザスは自分の椅子にどさり、と座った。
しかし、私とザンザスの間には沈黙しか下りない。
何話せばいいの…?
ベルやスクアーロなら話せるけど…話題が見つからないよ……
(恭弥なら、側にいるだけでよかった)
(あ、ダメ…恭弥のことを考えちゃダメだ…)
「お前、オレと初めて会った日のこと、覚えてるか?」
「初めて会った日…?」
ザンザスに言われて、思い出す昔の思い出。
もちろん覚えてるよ。イタリアのお祖父様の家で……
あの日はすごく天気のいい日だった――――
- 232 -
*前次#
ページ:
back
ALICE+