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「あっ…君がもしかして、“天秤”?」

「っ!!」



天秤、という言葉を聞いてすぐに体を起こして、睨みつける。

私を天秤だと知っているのはマフィアだけ。
つまり、この人は……マフィア。

私の、敵。


敵意をむき出しな私に、目の前の青年は苦笑したが、そっと、私に手を伸ばす。


殴られる。


そう理解した瞬間、身をすくめた。体を硬くして、震え始める。

怖い…っもう、痛いのはヤダ…!!


―――ふわっ



「え…?」



殴られると、思ったのに、そうじゃなかった。

初めての人の温もり。


―――――包まれるように、抱き締められてた……



「怯えなくていい。私は、君を裏切ったりしないから」

「…本当…っ?本当に…?私のこと、殴ったり、しない?」

「するわけないよ」

「…っ」



ぎゅっと、すがるように彼に抱きつく。

彼のことは知らない。でも…安心できる……

泣き方なんて、知らなかった。
涙の流し方なんて、知らなかった。

でも確かに彼女の目から涙が溢れた。

悲しみの、冷たい涙じゃなく……


初めて、信じれる相手を見つけれたうれし涙だった。

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