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「美瑠、行こう」



恭弥に手を差し出される。

思い出す、あの温かい手。



「………行けない、よ」


本当はその手を取りたかった。その温もりに縋りたかった。
本当は恭弥が好き。ごめんね、さっきはあんなこと言って。
助けてほしいの。このままじゃ、みんなが、恭弥が……

―――ダメ。こんなの都合のいい、妄想だ。
その手をとっちゃいけない。そう決めたの……

(本当は、あなたと話すことさえ、諦めていたから)



「…本気で、他の男と結婚するの?」

「っ!!」



したくない…っ!本当に好きなのは恭弥だけ!
恭弥だけなのに…っ

でも、言えない。言っちゃいけない。

(もう、恭弥の温もりを感じることもできない)

私は何も言えず、何も行動もできずに、ただ俯くことしかできなかった。



「…じゃあね」

「……っ」



自分で選んだはずなのに。
恭弥の『じゃあね』がこんなにもショックだなんて……

(背を向ける恭弥の顔が、すごく悲しげで)
(そんな顔させたくなかった……)

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