深い意味はなかったんだよ?
少し、食べてほしいなって気持ちもあったけど……

一人で食べるならみんなで食べた方が美味しいってよく言うし、作りがいもある。
だからできれば恭弥と一緒に、って意味だったんだけど。
こんなにびっくりされちゃうとこっちまでびっくりだよ。




「私一人だから、恭弥と一緒に食べたいなって。
あ、誰か作ってくれる人がいる?」

「ううん、美瑠に作ってほしい」

「よかった。じゃ、頑張って作るね!」

「(…結構恥ずかしいセリフ言ったんだけど……)」




何故か恭弥は少し苦笑していた。

恭弥が食べてくれるんだから、気合い入れて作らないと!
やっぱり定番と言えば卵焼きにハンバーグに唐揚げにシーフードとかもいれようかな?
そうなるとやっぱりおにぎりの方が合うし、何か具も買わないといけないね。

あとはえっと……って今考えなくてもいいっか。
どれだけ楽しみにしてるんだろう、私。




「そういえば棒倒しっていうのがあるんだよね?毎年大変って聞いたんだけど…」

「あぁ、聞いたことはあるよ」

「今年はツナが総大将するらしいの。だからツナがすごく心配……」

「……ふぅん」




恭弥はつまらなそうにそう呟いた。
しかもちょっとだけ拗ねているような表情で。

その表情に首を傾げつつも泣いていたツナを思い出す。
本当にみるみるうちに強引に決まっちゃって……可哀想だった。
ツナってマフィアのボスに向かないくらい優しいっていうか、争いごとが苦手そう。

だからこういう行事、本当はあんまり目立ちたくないんじゃないかな…?

まだ会ったばかりだから、そうとは断言できないけど。



「せめていっぱい応援してあげなきゃ!」

「(え、同情心…?)」

「恭弥も出るときは応援するね」

「……出ないよ」

「そっか、残念。恭弥のかっこいい姿、見れると思ったんだけど」




そうだよね。噂、というかツナ達からの情報によると恭弥って群れが嫌いらしいし。
群れっていったら不特定だけど、とにかく集団が嫌いって意味だと思う。
集団行動が苦手なのかな、とも思ったけど風紀委員長を務めてるくらいだからそんなことなさそう…だよね?
結論は恭弥の基準に触れないようにするってことになる。
その基準がまだわからないから……ってあれ?
私といることは群れに入らないのかな?
すごく根本的なことかもしれないけれど。
でも恭弥は普通に過ごしてるし、問題はない、って考えてもいいよね。




「じゃ、恭弥は私を応援してね!なーんて」




冗談だよ、という言葉は恭弥の瞳に吸い込まれる。
くるり、と恭弥を見ればとても綺麗な瞳で私を見つめていた。

その目に私の冗談の言葉も笑みも、吸い込まれてしまう。
そしてその綺麗な目を少しだけ細めて、優しく笑った。




「するよ」

「……っ、」




冗談なのに。冗談だよ、って言いたかったのに。
恭弥の真っ直ぐな瞳がそうさせてくれない。
逆に私の体温と頬が熱くなっていくだけ。

あぁもう今絶対私、顔赤い、恥ずかしい、何してるんだろう、もう!




「た、体育祭頑張ろう!」




これ以上恭弥を見つめていたら心臓がどうかなっちゃいそうで。
私はとっさに恭弥から目をそらして真っ赤に染まった窓を見つめる。
外にはまだ部活生がいて、そろそろ帰ろうかというような雰囲気。
放課後特有の空気が流れていて、その穏やかさが少しだけ心臓を抑えてくれた。


そんな私の様子に恭弥が緩やかに微笑んだのは、別の話。

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