2



「犬が多すぎなんだよ!」

「レシートいい。めんどい…」

「んな――!?え゛――!!?」

「…!!」



今の叫び声…ツナ!?

声のした方へ出てみると、一生懸命目をこすっているツナの姿があった。
あの叫び声でツナだと気づいたのか犬と千種も外に出てきた。



「うそ!そんな!!疲れてんのかな。それだけは起こっちゃいけないよ!それだけは!」

「相変わらずムカツク面してんな。んあ!?」

「ぎゃ――!出た――!!!う……そ、」

「ツナ!!」



あまりのショックだったのか、気絶してしまうツナ。
危ない!と慌てて倒れる直前に私がツナを受け止める。

途端にかかる、前より重くなった体。
…!ツナ、筋肉がすごくついてる。修行頑張ってるんだね。

体を労るようにそっと椅子に横たわらせる。



「何でこんな情けない奴に負けたのかわかんねーびょん。美瑠、そいつ捨てたほうがいいっれ」

「捨てられないよ」

「ちゃおっス。久しぶりだな、柿本千種、城島犬」



いつの間にか私の後ろに立っていたみたいで、振り返れば黒スーツを着こなしたリボーンがいた。
「でやがったなアルコバレーノの家庭教師!」と犬はすごく警戒していた。



「もう一人はどーしたんだ?ツナの霧の守護者は」

「…雲雀恭弥を…見に行った…」

「あいつが…?ヒバリに見つかったら大騒ぎになるぞ。美瑠も何でここにいんだ?」


リボーンの視線が突き刺さるのがわかる。

やっぱり…敵として、見られてるんだね。
でも…自分が決めた道だから、後悔はしていない。…少しだけ、胸が痛むだけで。

そう思い、声を固くして一言だけ返した。



「…たまたま会ったんだよ」

「……そうか。いつでも帰ってきていいんだぞ。
お前のこと、裏切ったと思ってる奴なんか一人もいねーんだからな」

「「…!?(一体、どういう、)」」

「…まだ、帰れない」



リボーンの、少し柔らかい声に私は泣きそうになった。

でも泣いちゃいけないと思い、とっさに小さく俯く。
どうして…みんなはこんなにも温かい人達なの……
私は、あんなに冷たく突き放しちゃったのに。

後悔してるわけじゃ、ないよ。
私がヴァリアー側についたことは私の意志だから。



「待てびょん!!美瑠、こっち側じゃねぇのかよ!!」



そうだった…犬達はまだ、私がヴァリアーにいることを、知らないんだったね。

怒ったように大声で言い放つ犬に目を合わせられなくて、そっと目を伏せた。



「ごめんね犬。私、今ツナ達の味方じゃないの」

「!…骸様が、何ていうかな」

「そうだびょん。美瑠がいるから骸さんは…」

「…ごめんね」



そう返すことしかできなかった。…これ以上詳しくは説明できなかったから。

そんな私の気持ちを察してくれたのかリボーンが話をそらすように「それにしてもお前ら大人しくしてるとただの嫌な感じの中学生だな」と冷静に言う。
リボーンの言葉に怒らないはずがなく、犬は即座に「うっへー!」と叫んだ。



「嫌な感じはよけーら!!あんまなめてっと!ど突くっつの!!」

「お、でたな。カバチャンネル」

「クスッ!」

「美瑠が笑ってくれるのは嬉しいれど、ちげーっつの!!サイだっつの!これ角らっ角!!ぶっ殺すっ角!!」

「もーやめなよ犬。今は他にやることもあるし」

「うるへーっ殺す!こいつもボンゴレも!!」

「え、ダメ!!犬」

「本気にしなくていいよ、美瑠」

「…、…うん、ごめん…」


でも、ふざけでもそんなこといってほしくない。今は、特に。
過剰反応だとわかっていたけど、…どうしても。

……スクアーロ…っ

(彼の優しい笑顔が、頭から離れない)



「ツナの奴情けねーな。もっと喜ぶかと思ったのに。
黒曜ランドでの戦いの後、ツナの奴オレが何か情報をつかんでるんじゃないかとあの戦いを思い出す度に聞いてきてな。
よほどお前達のことが心配だったみてーだぞ」

「ツナ…」


優しいね…ツナ。
かつては敵だった人も、戦いが終わった後は敵であろうと心配する。
ううん、優しいんじゃないね。どこまでも…大空のように広い器をもっている。

やっぱり、あなたがボスに相応しいよ……

犬もその器の大きさに気づいたのか、照れたように「ゲッ!」と吐き捨てた。



「こいつ触るとウザいのうつる!!いこーぜ柿ピー、美瑠!!」

「え、あ、うんっ」

「てめーにはもったいない霧の守護者らってボンゴレにいっとけ!…んじゃあ夜な」



本当に、素直じゃないね。
犬たちは今まで誰かに心配されたりすることが少なかった。
だから、誰かに…私以外の人間に心配されることがくすぐったくて仕方がないんだろう。
…そして、そんなときにどんな顔をしたらいいのかも、わからないのだろう。

嬉しいのに、それを表に出すことができないんだ。



「リボーン…」

「わかってるぞ」



クロームを…そして、骸を、お願いね。

そんな気持ちでうなずくと、私は犬と千種の後をついて行った。

- 280 -

*前次#


ページ:

back
ALICE+