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「てっ照れるよっ!!美瑠ちゃんだってヒバリさんとキスしたら…!」



ツナの言葉に、ずきり、と胸が痛くなり、思わず俯いてしまった。
ツナも私の反応で言ってはいけないことだったと気づいたのか、言葉を止める。

そして、ごめん!と思いっきり謝られたので、「気にしないで」と笑ってみたが、笑顔を作ることに失敗していることは自分でもわかった。
…あぁもう、ごめんね。そんな気まずそうな顔をさせるつもり、なかったのに。



「美瑠」

「…っ!!」



怖いくらい低い声が私の耳元で囁かれる。
自然と肩が震えてしまったが、声の持ち主…ザンザスは、怒気を収めることはない。



「まだ、引きずってんのか?」

「!ひきずってないっ!もう…恭弥のことは…っ」


言いたくない…っ!嘘でも言いたくない!!

でも…でも、言わないと恭弥が、みんながどうなるか…っだから…!



「恭弥のことは…忘れた、か、らっ」

『…!!』



みんなが信じられない、とばかりに私を見つめるのがわかる。

嘘だよ、忘れられないよ。…でも、そういうことで、みんなを守れる。
そう思ったら壊れそうな心が、少しだけ保てる気がした。

私の表情が見えないザンザスは私の答えに満足したのか、少しずつ怒気が収まっていった。



「フン…当たり前だ。お前はオレの婚約者なんだからな」

「…っ!は、い…」



あぁ、また心にもないことを言ってしまった。
今にも泣いてしまいそうな激情に襲われたが、ぎゅっと目を硬くつぶって感情を抑え込む。
気持ちを抑えるのは……皮肉なことに得意だから。

心が何も感じないように閉じ込めて目を開けると、表情をなくす。
ザンザスの腕から抜け出すと髑髏のところまで行った。

よかった…どこも悪いところは見られない。

(どうしても、気になっていたから)



「髑髏、どこか違和感はない?」

「うん。ありがとう、美瑠様」

「相変わらず様付けなんだね…別に呼び捨てで構わないんだよ?」

「…美瑠様は私と骸様を助けてくれた人だから」

「そっか…がんばってね。相手は、油断ならない人だから」

「うん…」


こくりと小さく頷く髑髏に小さく笑い返した。

すると了平さんが、仲間に入れるのか?と首を傾げる。
もちろん、あの隼人が簡単に認めるわけなくて、入れるわけねーだろ!こんなどこの馬の骨だかわかんねーよーな奴!!と、一蹴。

隼人の言葉に、犬がピクリと反応する。



「んあ?てんめー聞き捨てなんねーびょん」

「来るならこいや」



二人が険悪そうににらみ合う。
千種は何も言わないけど…静かにヘッジホックを構えていた。

きっと、千種と犬は表には出さないけど髑髏を仲間と認めてるんだ。



「隼人、髑髏のことなら私が保障する。…裏切ったも同然の私が保障するのも、変だけど」



少し目線を落とすと、隼人が悪りぃっと小声で謝る。

謝らないで……隼人が、悪い訳じゃないから。



「犬、千種おちついて。あなたたちが決めることじゃないよ。
ボス、私、霧の守護者として失格かしら」

「いっ」

「私は霧の守護者として戦いたいけど…ボスがどうしてもダメっていうなら従う…」

「え…ちょっ…ええ!?そんなの急に言われても…!だ…大事な事だし…!」

「でも霧の守護者として戦える奴はクロームしかいねーぞ」

「私も、そう思うよ」

「リボーンさんも美瑠も何てことを!!」


でも、確かにリボーンの言う通りだ……
黒曜の連中がからんでるとはいえあの女子も山本や獄寺君と同じように父さんが選んだんだ。

美瑠ちゃんも、信頼してるみたいだし…それにこの娘……



「じゃあ、頼むよ」

「な!!いいんですか10代目!!」

「うまく言えないけど、彼女じゃなきゃ…いけないのかもって」


よかった……髑髏もホッとしてるみたいだね。

(ツナが認めてくれなかったら)
(骸へ、恩返しができないから)

(髑髏は、骸への感謝のために生きてる)
(骸に利用されているとしても、それでもいいと言って)



「ありがと」



髑髏は背を向けて、一言。犬はざまーみろ、と笑っていた。

京子のお兄さんが円陣を組もう、と言い出し、私も入るように言われたが、遠慮しておく。
ザンザスの機嫌がどんどん悪くなっていることがわかっていたから、そろそろ帰らなければ。



「髑髏…」

「いい」

「え…」

「いらないよ、そんなの」



やっぱりそういうのは嫌なのね。

そういうところが…少し……――


(恭弥に似てる、なんて無意識のうちに考えてしまった私は)

(まだまだなんだろう)

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