プロローグ
さわさわと穏やかな風が吹き抜ける幻想世界に美瑠は一人体育座りをしてじっとその場に蹲っていた。
澄み渡る大空の下、美瑠は何もするわけでもなく、ただ、そこに存在している。
―――まるで、何かを待っているように。
その表情は焦っているわけでも、絶望しているわけでもない。
微かな希望を目に宿しながら…ただ、じっと、時を待っていた。
カサリ、と何もなかったはずの平原から小さな変化が現れて、美瑠は弾かれたように顔をあげる。
…そこには、小さな不敵な笑みを浮かべた、骸。
美瑠はその姿に安堵の表情を浮かべ、骸のその笑みを理解する。
『…さぁ…時間ですよ、美瑠…』
骸の声に導かれるように美瑠は先ほどまでぴくりとも動かなかったその場からゆっくり立ち上がる。
その顔には先ほどより確かな希望の光を灯しながら……
ふわり、と骸に対して笑みを浮かべると、美瑠は小さく、本当に小さく呟く。
「今行くからね…ツナ」
あなたとの約束を果たすために。
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