吹き抜ける心地のいい風を切って駆け抜ける。
走るっていうことがこんなに気持ちのいいことなんて気づかなかった。

テープをきった瞬間……盛大な歓声に包まれる。






7 体育祭はハプニングだらけ!後編






並中の応接室というは都合のいいことに運動場がよく見渡せる場所。
秋風と呼ばれる少し熱気を孕んだ風が応接室の窓を通して入ってくる。
僕はその応接室の窓に腰掛け、群れる草食動物達の群れを不機嫌顔で見下ろしていた。

機嫌が悪い理由は二つ。

一つは群れが僕の視界に入るから。
これは仕方ないというかいくら僕でも学校行事を自分の手で壊したくないのだ。
つまり学校行事と群れを咬み殺すこととを天秤にかけると、圧倒的に学校行事が大切だったから今日は群れていても咬み殺さないだけ。

まぁ…僕にしては我慢している方だよ。


そしてもう一つの理由は、美瑠。

お弁当作るって言っていたのに今日一度も会ってない。
あの群れのどこかにいるかと思うと更に苛々する。
美瑠が群れているから?…違う、僕以外の男といるかもしれないことが気にくわないんだ。

何故?…そんなの、愚問中の愚問。
ちくり、と中途半端な、でもどんな怪我よりも痛む胸に再び眉を寄せる。

…僕も、ただの男だったことだね。

ふっ、と自嘲ともつかない苦笑を浮かべて再び運動場へと目を向ける。

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