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匣…自然の中にあるカタチから兵器を作れないかと4世紀前の生物学者、ジェペット・ロレンツィニが残した343編の設計書が元になってできたもの。
当時の技術では再現できないものばかりで、その当時は相手にされず、ずっと眠っていた。

…けど、三人の発明家が現れたことで、匣研究は急速な変化を見せる。



「…だが、匣を現在に成り立たせた本当の立役者は、ジェペットでも優秀な科学者でもない。――偶然だ」


そしてその偶然は、尋常でないほど頻繁に起きている。


「知るほどに謎は深まるばかりでね」



恭弥の興味をそそらせる。
匣のことを調べているときの恭弥はとても楽しそう。

空の上の衝突の音が小さくなってきているので、見上げるとそこには恭弥が放ったロールちゃんがツナのロールちゃんを破壊しているところだった。
大空の炎はすべての属性の匣を開匣できるが他属性の匣の力をすべて引き出すことはできない。

やっぱり合った炎の方が、匣も力を発揮できるのだ。



「ツナ、月専用の匣があるように、大空にも大空専用の匣があるんだよ」

「…哲」

「へい」



一瞬私と恭弥の視線が交わるが、私はここに残る、という気持ちをこめて笑いかけると恭弥はしょうがないとばかりに視線を外してここから出ていく。

それと同時にリボーンを探しにきた武が入ってきたが、ツナが無事だと知ると嬉しそうに笑った。
疲れてしまったのか、いつの間にかツナはその場で寝ている。
寝ちゃったね、とラルに笑いかけたが、ラルは容赦なくツナをビンタしてたたき起こしていた。

…あはは…相変わらずのスパルタ……



「ツナ、起きて」

「ぶぶっ…!…あ、美瑠さん…!」

「ふふ、大丈夫?」



顔、真っ赤に腫れているよ、と鏡を見せてあげると見事に腫れている顔にドン引きしていた。
とりあえず持っていた救急キットから湿布を取り出して、ツナの顔にはってあげる。
つめた!と一瞬顔をしかめるが、そっとその上からなでてあげるとその冷たさが少しだけ和らいだようだった。



「…あ、ありがとうございます…」

「どういたしまして。…敬語じゃなくていいんだよ?前みたいに美瑠ちゃんって呼んで」

「でも、年上じゃ」

「気にしない!ね?」

「うん…美瑠ちゃん」



10年後よりも高い…でも、優しさは変わらない声が私の声を呼んでくれる。
その懐かしさにじんわりと温かいものが心の中に広がっていった。

…ツナ、だ。本当の、ツナ。
嬉しくて…懐かしくて、少しだけ涙がにじんだ。

だって、この時代のツナは…今は会いたくても、会えないから。

それに少しだけ慌てるツナに小さく笑いかける。

…大丈夫。ちょっと、胸が苦しくなっただけだから。



「ごめん、大丈夫!ね、もう一回だけ呼んで?」

「え!?」

「お願い。もう一回だけ!ね?」

「…え、えっと……、…美瑠ちゃん」

「………うん。ありがとう、ツナ。
さっ!修行しよっか!今度こそ恭弥に殺されちゃうよ」

「ひ〜!やばいよ、本当に〜!」

「がんばろうね」



大丈夫。きっと、大丈夫だよ。
ツナなら…みんなならきっと、強くなれる。

そう信じているよ。

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