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その瞬間、恭弥に向かって何かがぶつかっていったが、恭弥はその前に避ける。
攻撃は見えないけど、恭弥は幻騎士の攻撃を見事に防いでいった。

見えないはずの攻撃をさける恭弥に幻騎士は最初、まぐれかと思ったようだが、正確に防いでいく恭弥に攻撃が見えているように感じ、驚いていた。
その驚きが伝わったのか、楽しそうに恭弥は笑う。



「幻術には詳しいんだ。嫌いだからこそね」



ロールちゃんが幻騎士に向かって飛んでいく。…すごい、さすが恭弥。
あの幻騎士をこんなに簡単に倒しちゃうなんて……

行こう、と言われて頷き、立ち上がろうとしたが、ロールちゃんの「キュウウ!」という声に動きを止める。
ブシャアア!と音を立ててロールちゃんが破裂し、中から幻騎士が現れる。

まさかロールちゃんが破壊されるなんて…!

幻騎士は「できる」と恭弥を称したが、恭弥はその余裕が気に入らなかったようだった。
ロールちゃん二つを開匣して、さらに幻騎士に猛攻撃を仕掛けていく。

幻覚は簡単にいうと頭の中の想像を映像化したものだ。つまり、映像処理が間に合わないほどの負荷をかけることができれば、幻覚は解ける。
しばらくすると恭弥がいうように処理が間に合わなくなってきたのか、綻びが生じる。

落ちてきたのは…たくさんの海牛。
その気持ち悪さに思わず眉を顰めたが、その海牛たちは一斉に恭弥に飛んでいく。
恭弥は再びリングを指にはめると海牛たちを避けていった。
この恭弥の動きに、幻騎士はようやく見えないはずの幻覚を察知する方法に気付く。

骸との戦いで身に付けた方法…それは、炎をレーダー代わりにつかう方法だった。
…しかも今使ったので恭弥の持っている雲のリングは残り3つになってしまった。

残りのリングだけじゃ幻騎士には勝てない…っどうするつもりなの、恭弥。



「ネタさえわかれば怖くはない。対処すればいいだけの話だ」

「いいや。もうその必要はないな」



恭弥のスーツからすべてのリングが取り出される。

…まさか、恭弥…あれを使うつもり…!?



「君はかつて味わったことのない世界で、咬み殺してあげる」



三つのリングに同時に大量の炎を灯し、一気に匣に炎を注入する。
無理矢理注入しているからバリバリと匣が壊れていく。本来なら正しくない開匣の方法…でも、それでいいの。

パリン!という音を立てて、匣が開匣される。



「裏球針態」



ロールちゃんの針がどんどん広がっていく。幻騎士の匣兵器も、私も、武も外に置いて。

戦う人間以外は入れない空間。

私はそっと外からロールちゃんの体に触れて、恭弥のことを考える。
きっとリングがなくなって匣の戦闘ができなくなる前に決着をつけたかったんだろう。
…だって、私たちには時間がないから。

中では激しい戦闘が始まってしまった。恭弥ほどの強さがあれば大丈夫だとは思うけど……



「…恭弥…!」



負けないで。…死なないで。

幻騎士が炎を集中させて恭弥のトンファーを少しずつ切っていく。
それでも恭弥は不敵な笑みを絶やすことはない。信じているから。彼を。そして自分を。



「うらやましいな」

「…っ、えぇい!死ねい!」

「恭弥!」



恭弥に向かっていく幻騎士。時間を見れば、その瞬間だった。

――あとはお願いね…恭弥を…みんなを守って。

そっと目をつぶり、私の意識はそこから深く深く沈んでいった。


(私のわがままを、聞いてくれてありがとう)
(恭弥と、一緒に……)

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