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怖い。そう感じたのは初めてだった。
…でも、どこか悲しそうな雰囲気を感じるのはどうして…?
「いいや、ただの小休止だよ」
遠くで聞こえてきた冷たい声に、意識が少しずつ浮かんでくる。
そういえばさっき、睡眠ガスを吸ってしまって……
恭弥は?それに、みんなは、無事なの…?
ゆっくり目を開けてみるとホログラムで現れた白い、真っ白い人が目に入る。
誰だろう、と考えをめぐらせていると「白蘭さん!」と正ちゃんがその人の名前を呼ぶ。
…あれ、なんで正ちゃんがここにいるんだろう…?しかも、大人。
話を聞いているとどうやら正ちゃんはこの白蘭さんという人を裏切っていたらしい。
そして、これからボンゴレファミリーと…この人が率いているファミリーと力比べをすることになった。
真6弔花という強そうな人たちを紹介され、みんなの表情が硬くなる。
「白蘭さん、力比べって…一体何を企んでるんですか!」
「昔正チャンとよくやった“チョイス”って遊び覚えてるかい?」
「…?」
「あれを現実にやるつもりだよ♪」
チョイス…?選ぶってこと?一体何を、
「美瑠チャン」
「…っ!」
すっと白蘭という人の視線が私に向いた瞬間に体中を駆け巡る寒気。
怖い。
そう初対面の人で感じたのは初めてだった。
でも、同時に感じたのは寂しさ。…怖いのに、寂しい…?どういうこと、なの。
困惑している私とは対称的に白蘭さんはすごく嬉しそうに私に笑いかけた。
「よかった。やっと見つけた。ずっと探してたんだよ?
僕の美瑠チャン。すぐに迎えに行くから…待っててね」
「…っわた、しは…あなたの所には行かないよ。だって、私は、」
「ボンゴレの月の守護者だから?雲雀恭弥が好きだから?――関係ないよ」
ぞくり、と鳥肌が全身に立つ。…彼があまりにも冷たい目で私を射抜いたから。
そんな私の恐怖心を感じ取ったのか、白蘭さんはすぐににこり、と笑った。
「…ま、会ったらきっと気持ち変わると思うよ♪」
「………」
「じゃあボンゴレのみなさん、細かいことは10日後に発表するから楽しみにしててね♪」
それまでは一切手を出さないと約束した白蘭さん。
そして、さらにここが消えてしまうと宣言したことで、時間がないことを知る。
白蘭さんが姿を消したと同時にこの施設全体がまぶしい光に包まれていく。
本当にテレポーテーションするの…!?
正ちゃんに「何かにつかまれ!」と言われて、恭弥の腕が私を包み込み、反射的に恭弥の腕にしがみつく。
このままみんながバラバラになったらどうしよう…っ
そんな不安の中、一瞬にして光に包まれ、…ぽっかりと穴の開いた景色が広がる。
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