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あれから数日…どうやら京子とハルのボイコットは終わったようで、みんなそれぞれ修行に集中することができていた。

そんな中、私は恭弥の修業の傍で自分の匣と向かい合っていた。
未だにうんともすんとも言わない匣……やれることはすべてしたと思う。それでも、開匣できなかった。

…ねぇ、匣さん。あなたは一体、私に何を望んでいるの…?
一体、どうしたら、


“覚悟はあるか”


「…っ!?」



突如聞こえてきた低い声。
…今、匣から聞こえたような気がした。
まさか、匣が…私に話しかけた、の?

そう信じられない気持ちで匣を見つめていると再び頭の中に同じ言葉が同じ声で響く。

覚悟…もちろん、ある。みんなを守るためなら、命だって捨てる覚悟が。



“違う”

「え…」

“お前は、生きなければならない。――生きる覚悟は、あるか”


生きる、覚悟…?それは、一体、どういう、こと…?


“お前の力は人の命を奪う。…それを背負う覚悟はあるのか”



「…っ!!」



人の命を奪う……それは、昔犯した罪であり、…もう、したくないと思っていること。
人の命を奪ってしまうほど、強力な力。

その力を手に入れ、奪った命を背負って生きていく覚悟……

ぎゅっと手を握って、匣を優しく抱きしめた。



「…怖い。人を殺してしまうのは……でも、あなたが、一緒に生きてくれるのでしょう?」

“………”

「あなたと一緒なら、大丈夫」



きっと殺してしまったときは、すごくつらい。
ごめんね、と…何度も謝って、何度も後悔するだろう。

それでも、前に進んでいく。…あなたと、一緒に。

その気持ちが伝わったのか、匣の中で、誰かが笑ったような気がした。



“その覚悟、しかと受け取った”


さぁ、注入しろ。お前の炎を。

そう言われている気がして、私は再びリングに炎を灯す。
その炎は今まで灯してきた炎の中で一番澄んだ色で…とても綺麗だった。
純度の高い炎をそのまま匣に注入するとついにボンゴレ匣が開匣する。

匣から出てきたのはとてもとても大きな真っ赤な鳥……その姿はまるで、…不死鳥…?



「ピュウウ」



そうだ、と言わんばかりに鳴く不死鳥。…そっか、不死鳥なんだ。
何度だってよみがえる、不死鳥…それが、私の匣兵器。

甘えるようにすり寄ってくる不死鳥さんを優しくなでてあげる。

不死鳥さんって呼びづらいな…不死鳥はフェニックスだから…フェニちゃんはどうかな…?
するとフェニちゃんは嬉しそうに鳴くから、きっとこの名前が気に入ったのだろう。



「フェニちゃん、これからよろしくね?」

「ピュウウウ!」


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