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「…あ。師匠ーやばいですー」
「!…どうやら時間のようですね。美瑠、雲雀恭弥、あなたたちしばらくここに隠れていなさい」
「君の指図は受けないよ」
「僕に時間をくれれば、もっと面白い戦いができますよ。それでもですか?」
恭弥の表情が少しだけ動く。…あぁ、いま恭弥は揺れている。
骸の言う通りにはしたくない。でも、さらに面白い戦いがしたい。
骸が言うのならきっと何か策があるのだろう。真6弔花と戦うのなら、少しでも策は必要なはず。
恭弥を説得するなら、あと一押しだ。
「恭弥、少しだけ待ってみよう。待っていて損はないはずだよ」
「……1分だけだよ」
「クフフ…えぇ、十分です」
不敵に笑う骸に背を向けて、気配を消して恭弥と一緒に茂みに隠れる。
骸たちも気の木陰に隠れたかと思うと近くに人の気配をわざと作った。
その気配に気付かない桔梗じゃない。すぐさま桔梗の視線がその茂みへと視線が向く。
「そこに隠れている君もどうですか?」
桔梗の言葉にすぐさま骸が私と恭弥の幻覚を作り上げる。
本物そっくりの―――有幻覚を。
何も知らないバジルやお兄さんは幻覚を見て私たちだと思ったようだった。
もちろん、あの桔梗も。
「雲雀殿、美瑠殿まで!」
「美瑠様、やはり彼と一緒にいらっしゃったのですね。…あなたはなぜ、手を出さず見ていたのですか?」
「うちのボクシング部主将は試合中に手を出すと、委員長会議にまで乗り込んできてうるさいからね」
不機嫌そうに眉を少し寄せた恭弥に桔梗は「美しい友情の協定ですね」と笑みを浮かべる。
でも、その笑みはどこまでも不敵で、何か嫌な予感がする。
「ですが、私のルールはあなたと違い…手段は選びません」
桔梗が手を鳴らした瞬間、恭弥のすぐそばの地中からヴェロキラプトルが飛び出し…恭弥の腕を引きちぎる。
血を飛ばしながら腕がなくなる様はたとえ幻覚でもショックで、思わず息をのんでいた。
幻覚の私は「恭弥!」と泣きそうな顔をし、止血するためか医療用の匣を開匣している。
でも、私を捕まえたい桔梗は蔓を伸ばさせて、私の体へと巻き付かせて拘束していた。
「あなたたちにあまり時間を割けないのです。
美瑠様を一刻も早く白蘭さまのところへ連れて行かねばならないので。
先を急ぐことをお許しください」
何体ものヴェロキラプトルが恭弥に向かって飛んでいく。
恭弥はロールちゃんで防御しようとしたが、先ほどのように土からも攻撃されて……
「……っ!!」
違う。あれは幻覚。恭弥じゃない。恭弥はここに、隣にいるんだから。
だから、大丈夫。違う。恭弥じゃない。恭弥じゃない…っ!
そう言い聞かせて、嫌な音を立てる心臓をぎゅっと握りしめる。
幻覚であろうと恭弥が血まみれになって死ぬところを見るなんて……
息ができなくなりそうなほど息苦しくて、思わず血が出るほど手を握り締めているとそっと恭弥が手を私の手に重ねる。
大丈夫。ここにいるよ。
そう言ってくれているかのようだった。
…この温もりが、本物。そうだよね…動揺することなんて、ないんだよね。
ふっと力が抜けて、重なっていた恭弥の手に胸を押さえていた手を重ねて、ふわりと笑いかける。
ありがとう。大丈夫だよ。
そんな気持ちを込めて。
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