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激しい戦いの中、私は負傷しているお兄さんやバジルたちの手当を行う。
お兄さんがツナに連絡してくれたおかげで、ツナに状況を伝えることができた。

常に炎同士がぶつかり合う音がして、戦場の激しさを物語っている。

お兄さんに少し強めに包帯を巻くと同時に近くでジジジ、と電気がぶつかり合うような音がして思わずそちらに視線を向けた。


すると突如強い光が現れたかと思うと――そこには白蘭そっくりな男の人が立っていた。
一見白蘭かと思ったけど、目の下のあざが左右逆であることから違うことがわかる。

誰なのだろう、と観察していると桔梗が「GHOST…」と驚いたように呟いた。



「GHOST…?」

「あれが噂のGHOST?や、やばくない…?」

「(味方であるブルーベルまで怯えている…?どういうこと…?)」



何か、嫌な予感がする。


そんな私の心情を置いて、レヴィが「ミルフィオーレに間違いはない!指を見ろ!マーレリングだ!」と叫ぶ。
よく見てみれば、確かにゴーストの指にはマーレリングがはめられていた。
怖いもの知らずのベルが先手必勝、と言って炎を纏わせてナイフをゴーストに向けて投げつける。
そのナイフの様子を怯えながらも観察する桔梗とブルーベル。

…もしかして、三人もゴーストを見るのは初めてで、どんな能力を持っているのか知らない…?
じゃあ、どうしてこんなにも怯えているの?…三人は、何を知っているの…?

不安が膨らむ中、ベルのナイフはゴーストの体を通り抜けていき、幻覚なのではないかと疑われる。


――違う。それにしては、気配や存在感がはっきりしすぎている。

どうやら幻覚を見破るプロであるフランや骸も同じ考えのようで、ゴーストは幻覚なんかじゃなく、ここに存在しているようだ。
ならば、とレヴィや炎の合わせ技をぶつけるけど、やはり結果は同じ。

…いや、違う。何か、飛んでくる…!

ゴーストから何かが飛んできて、素早く避けると動けないお兄さんたちを木の陰に隠す。
その中でも避けきれなかったブルーベルにゴーストの攻撃が当たり、ブルーベルが一瞬にして、ミイラのようになる。

…っ、これは、一体…どういうことなの…!味方なのに…!

飛んでくる攻撃にザンザスは銃撃を向けるけど、驚くことにゴーストはザンザスの炎を吸収していた。
そして、今度は勝手に私たちのリングから炎が灯り、炎がどんどんゴーストへ吸い込まれていく。



「恭弥…っ」

「美瑠、リングを外して。彼からできるだけ離れるんだ」

「うん…!」



リングを外せば少しだけ和らぐ炎の吸収。でも、私の天秤の力は手からも灯せることから微かだけど、体からも炎が吸われているのがわかる。

この危機的な状況にお兄さんがツナにユニを連れて逃げるように連絡する。
私も逃げた方がいい、と判断されたのか、美瑠も沢田と合流しろ、とお兄さんから指示が飛ぶ。

…っ確かに、ゴースト相手では危険かもしれない。でも、それはみんなも一緒のはず。
みんなを守るために今一緒にいるのに、肝心なときに逃げることなんてできない…!

それに、あのツナがみんなが危険なのにユニちゃんを優先して逃げるはずがない。
ユニちゃんも大切だけどみんなも大切だから…きっと、助けにきてくれる。絶対、大丈夫。

武やスクアーロも来てくれて、心強くなってきているとき、ゴーストの電撃が激しくなっていく。



「何をしでかす気だぁ!?」

「…!まずい!彼はここへいきなり現れた。まるで瞬間移動でもしたかのように。
吸収した炎エネルギーを使い、再び遠くへ移動する可能性があります」

「ということは…!」


「一気にユニのもとへ!?」


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