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「……庭、」

「え?」

「庭って、ないんですか?」

「庭?あるけど、」

「庭にだけでも、行ったらだめですか?もちろん、逃げません。約束します」

「逃げないって確信をもてないよ」

「今私が逃げたらボンゴレに帰るしかありません。逃げたことでボンゴレとミルフィオーレの衝突が大きくなることは間違いないでしょう。
…それは、私が望むことではありません。ボンゴレを守ることが、私のすべて……それでは、確信になりませんか?」



美瑠ちゃんの視線が再び僕へと向かう。…その眼には、逃げたいという意志は見えない。

負の感情を僕に向けない美瑠ちゃん。そんな美瑠ちゃんの願いを少しでもかなえてあげたいと思うのは、やはり僕も人の子なのだろう。
美瑠ちゃんが逃げる確率はかなり低い。なら、少しくらいなら、いいかな。



「…僕も一緒っていう条件ならいいよ」

「…!もちろん」

「なら、行こうか」



美瑠ちゃんの足の鎖だけ外して、美瑠ちゃんの手錠を僕がスイッチを押したら高電圧が流れる手錠へと変える。
美瑠ちゃんが逃げるようなそぶりを見せたらすぐにスイッチを押して美瑠ちゃんを気絶させる。

…逃がすことは、しない。まぁ、保険だ。

この部屋から出られることがとても嬉しいのか、美瑠ちゃんの横顔は明るい。
ミルフィオーレの庭に繋がる扉を開けると、美瑠ちゃんはまぶしそうに目を細めて、大きく息を吸った。



「気持ちいいー…綺麗…」

「おりよう」



美瑠ちゃんにエスコートの手を差し伸べると美瑠ちゃんは一瞬だけ逡巡するような表情を浮かべたが、恐る恐る美瑠ちゃんの手が僕の手に重なる。
それだけも僕はすごく嬉しくて、嬉しくて、心からの笑みを浮かべて美瑠ちゃんを庭へとエスコートする。
階段を下りて、芝生の柔らかさが僕と美瑠ちゃんの足の裏をくすぐる。

美瑠ちゃんは小走りで走り出して、無邪気に走り回った。…僕の手を握り締めながら。



「久しぶりに体動かせたー!やっぱり気持ちいいー!」

「ちょ、美瑠ちゃん、痛い、」

「え、あ!ごめんなさい!引っ張ってた!」



ぱっと手を離して、美瑠ちゃんは申し訳なさそうに僕を見上げる。

…つないでいた手を離されて、少しさびしくて。

もう一度美瑠ちゃんの手をぎゅっと繋いで、美瑠ちゃんに大丈夫だと笑いかける。
風が気持ちがよかったからその場にごろり、と寝転がると、美瑠ちゃんもその場に座り込んだ。



「庭は慌てなくても逃げないよ。あ、マシマロいる?」

「…マシュマロじゃない?」

「おいしいよ♪」

「…、…じゃあ、一個だけ」



袋から一つだけつまみ出して、美瑠ちゃんはぱくり、とマシマロを食べる。
僕はその隣でもぐもぐと何個も食べていると美瑠ちゃんは「…おいしい」と小さく笑った。


――あぁ、そっか。

僕はこの笑顔が見たかったんだ。この笑顔を、向けてほしかったんだ。


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