2
―――次の日。
朝はいつも通り登校し、恭弥にお茶を淹れながら風紀の仕事をこなしていた。
何日か経ったのでだんだん風紀のお仕事の効率も上げることができ、少し仕事もはかどってきた。
今日から集団転校生がくるって言っていたけど…今頃自己紹介をしているのだろうか。
私のクラスにも集団転校生が来るといいなぁ……後で京子か花に聞いてみないと。
そんなことを考えていると誰かが応接室の前に立った気配がする。
草壁さんじゃない。…見知らぬ気配だ。誰かな、と首をかしげているとノックもせず「失礼!」とドアが開かれる。
「あなたが並盛中風紀委員長、雲雀恭弥」
「…!誰?君?」
「至門中学3年、鈴木アーデルハイト」
そこに立っていたのはとても綺麗な女の子。スタイル抜群で、至門中学の制服を着ていた。
彼女は「これよりこの応接室は粛清委員会に明け渡してもらいます」と当然のように言い放った。
…粛清、委員会…?もしかして、至門中学でいう風紀委員会みたいなものなのだろうか…?
「断るのなら、それなりに」
そう堂々と言い放つアーデルハイトさん。
恭弥の怖さを知らないからそんなにも自信満々に言えるのだろうか。
それとも…誰にも負けないという自信があるから強気に出ることができるのか。
恐らく後者だろう、と思っていると恭弥は「粛清委員会?」と何でもないように聞き返す。
「ええ。これからこの学校の治安は並中の風紀委員会ではなく、至門中の粛清委員会が守ります」
「ふぅん。面白いけど…それには全委員会の許可が必要になるな」
「もう許可は取りました」
「「!」」
「力ずくで」
アーデルハイトさんの手には風紀委員会以外の全委員会の委員長の血判が押されていた。
しかも、力ずくで印を押させた証拠としてぼこぼこにした委員長たちの写真まで。
その手法はまさに強引。
力ずくという手法に恭弥は楽しそうに「ワオ」とこぼす。
「僕がその申し出を断っても、君はあきらめそうにないね」
「当然です。力ずくで納得してもらいます」
ゆっくりと立ち上がる恭弥は、おそらく彼女とやりあう気満々。
力ずくで抑え込もうとするのなら、こちらも力ずくで黙らせようと思っているのだろう。
でも、無駄な争いは周りの迷惑になってしまう。
特に権力争いなんて無駄なこと、恭弥にはする必要はない。
なぜなら、ここは並中で、並中のルールは風紀委員、ひいては風紀委員長である恭弥であることは明白なのだから。
立ち上がった恭弥の前に私がかばうように立つと、私より断然背の高いアーデルハイトさんをしっかりと見上げた。
「アーデルハイトさん、お話はわかりました」
「素直に聞いてくれるのね」
「いいえ。あなたのお話を鵜呑みにするわけにはいきません」
「理由は」
「理由は二つです。
一つは、委員会を新たに発足させるには全委員会のみならず、先生たちの許可も必要だからです。
予算を出すのは学校です。学校、つまり先生の許可なしには発足も、活動も許されません。
二つ目は、学期途中に新たな委員会を発足しても予算がないからです。
予算案は風紀委員会の仕事であり、予算はすでに3月の時点で組まれています。
予算担当の風紀委員会としても新たな委員会に出せる予算はないです。
以上のことから新たな委員会である粛清委員会が活動することは許可できません」
「だからこそ、風紀委員会に代わって活動すると言っているのよ」
「それは、「美瑠」
恭弥に言葉を制されて、思わず恭弥の方へ振り返る。
恭弥の表情からは何も読み取れないが、とにかくアーデルハイトさんの言い分をつゆほども気にしていないようだった。
「見回り行くよ」
「それは粛清委員会が行います」
「必要ないよ。僕がいるんだから」
行こう、と促されて、少しだけアーデルハイトさんを気にしたが、素直に歩き出す。
その瞬間、アーデルハイトさんの蹴りが恭弥へと向かい、素早く私が反応する。
恭弥に当たる前に私が腕で受け止め、その反動を使ってアーデルハイトさんの体を吹き飛ばした。
アーデルハイトさんはまさか私が反撃してくるとは思っていなかったようで、私を大きな目で見つめる。
恭弥の陰に隠れてあまり表だっては動かないが、私だってマフィアの一員。
戦うことだってするし、ちょっとやそっとじゃ負けない自信はある。
恭弥を見上げると恭弥は「さすが」とばかりに満足そうに笑っていた。
- 393 -
*前次#
ページ:
back
ALICE+