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「ごめんなさい、アーデルハイトさん。でも、恭弥に危害を加えるのなら私も黙ってはいられないんです」

「…No.2という名は伊達じゃないということね」

「恐れ入ります」

「でも、あなたに用はない」



私を通り抜けて、アーデルハイトさんの拳が恭弥へと向かう。
恭弥は一瞬だけアーデルハイトさんに視線を向けたが、すぐにそらし、ひょいと軽々とよけた。

そこで終わるアーデルハイトさんじゃない。すぐに次の反撃が恭弥を襲う。

でも、恭弥は何ともないように避けると「美瑠」と私の名前を呼んで、走り出した。
恐らく恭弥はアーデルハイトさんを撒くつもりだ。
恭弥が使う道は大体わかっているので、恭弥の後を急いでついていく。

アーデルハイトさんは「待て!」と叫んで私たちを追いかけていたが、ここは恭弥の庭。
簡単に追いつけるはずがなくて、しばらく走っているとアーデルハイトさんを撒くことができた。



「…撒いた、かな」

「うん。…行こう」



ゆっくり歩き出した恭弥の横に並んで、見回りを始める。
時々路地裏でたまっている不良の人たちに制裁を加えながら普段通りの道を歩いた。

いつもと同じように容赦のない恭弥。

救急車を呼びながら、不思議に思うのはアーデルハイトさんのこと。
普段だったら戦いの場を楽しむ恭弥のことだから、手加減なんてしない。
ましてや、避けることなんて。普段なら「ワオ、草食動物が牙を剥いたのかい」なんて言いながら咬み殺すはずだ。

…でも、今日はアーデルハイトさんに対して攻撃することはなかった。

もしかして、女の子だから…?ううん、恭弥に性別は関係ないはず。じゃあ、アーデルハイトさんだから…?



「…ねぇ、恭弥」

「ん?」

「どうして、アーデルハイトさんの相手をしなかったの?」

「…?する必要がなかったから」

「でもいつもならだれが相手であろうと咬み殺すよね」

「…美瑠、何を気にしているの?」

「え…」



恭弥に不思議そうに聞かれて、私は思わず言葉に詰まっていた。

恭弥が戦おうと、戦うまいと恭弥の自由なはずだ。…戦わない理由なんて、ないはず。
それなのに、戦わない理由を深く考えてしまうなんて……



「…ごめん。なんでもないよ」

「……、…そう」

「あ!私お買い物して帰らないと。明日朝一だったよね?」

「うん」

「じゃあまた明日ね」



ばいばい、と恭弥に手を振ってその場から急いで離れる。なんだか、後ろめたくって。


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