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商店街の方に向かって歩いていると前から歩いてきたのは少しだけ洋服を汚したツナ。
「ツナ!」と声をかけると「美瑠ちゃん!」とツナが笑顔で振り向いてくれる。
どうしたの?と首を傾げると「ちょっと喧嘩に巻き込まれて」と苦笑するツナに相変わらずだね、と笑う。
ツナの手にあるのはボロボロになった教科書。
ツナの、…ではなさそう。じゃあ、いったい誰のだろう?と首を傾げていると私の視線に気づいたのか「これは転入生の子のなんだ」と見せてくれる。
教科書には「古里炎真」と書いてあり、そういえば同じクラスに転入してきた子の名前だと思い出す。
もう一人は確か…し、…シ、シットピーさん、だった、かな…?
「教科書届けるなら、私も一緒に行くよ」
「ありがとう…!」
「まだ転入生の子にあいさつもしてないし」
商店街の方にはいなかったから河原の方じゃないかな、と予想を立てて河原へと向かう。
日も暮れているから急がないとね、なんて話しながら歩いていると赤い髪をした男の子が川辺に座り込んでいるのを見つける。
何しているのかな、と目を凝らすとズボンを縫っているようだった。
「自分で縫えるんだ!」
ツナが声をかけたことに驚いたのかビクリと肩を震わせたかと思うとブシュッと血が飛び散る。
どうやら手に針を刺してしまったようだった。
そのことに私たちまで驚いて「だ、大丈夫!?」と声をかけた。
「ゴッゴメン!そんなつもりはなかったんだ!!落としてった教科書を届けようと」
「はひはほ(ありがと)」
刺してしまった指を口で止血しながら話す古里炎真くん。
そこに置いといて、と言われるけれど、はいそうですか、と置くのは忍びない。
でも、と言いよどむツナに大丈夫、と言って古里炎真君はズボンをはき始める。
…けど、なんだか変なところを縫ってしまっていて、ちゃんと穿くことができていなかった。
「(ダメダメだよこの人…もしかしてオレ並!?)」
「不器用なんだ。笑えばいいよ」
「笑わないよ。私、縫い直そうか?」
「え…」
炎真君の視線が私に向かって、初めて目線が交わる。
不思議な瞳をした男の子だな、って思った。…どこかあきらめていて、…どこか信念があるような瞳。
にこり、と笑いかけると炎真君は立っていた片足を少しだけずらす。
その反動で、炎真君はそのままバランスを崩してしまい、川へと体が落ちていってしまった。
「危ない!」とツナは炎真君の袖をつかんでいたけれど、そのまま炎真君と一緒に川へ落ちていった。
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