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「ツナ、炎真君、大丈夫!?」

「あーあ」



ツナはびしょ濡れだよ、と苦笑していたが、その隣でバシャバシャとしている炎真君。

もしかして深いと思っているのかな…?この川はとても浅いんだけど。

ツナも同じように思ったのか「浅いよ」と声をかけると炎真君はぴたりと体を止めていた。



「…ふふ。はい、二人ともつかまって」

「ありがとう」



ツナは私の手にすぐにつかまって、川から引き上げることができた。
でも、炎真君は私の手をじっと見つめていて、私の手を取ることもない。

炎真君?と声をかけるとようやく炎真君は私が助けるために手を差し出したことに気付いたのか、私の手をつかんでくれていた。



「…あ、ありがとう…」

「どういたしまして。…初めまして、だよね?私、彼方美瑠。同じクラスだよ。よろしくね」

「…同じクラス…?」

「あ、普段はクラスにいないの」

「…そうなんだ…」



少しだけ残念そうにしている炎真君。その様子を見ていたら何だか申し訳なくなってきて「応接室にいるから遊びに来てね」と伝える。
応接室?と首を傾げていたけれど、炎真君は静かに首を縦に振ってくれた。



「寒いからとりあえずオレの家に行く…?」

「あ、うん!そうだね、奈々さんに会いたいし。炎真君も行こう」



炎真君に笑いかけてツナと三人で歩き出す。
ツナの家につくと奈々さんはずぶ濡れの二人を見てびっくりしていたけど、着替えを用意してくれた。

久しぶりね、と笑う奈々さんにホッとしながら暖かい紅茶をごちそうになる。



「よかったじゃなーい。新しいお友達ができて」

「(と、友達っていうか…)」

「もしよかったらごはん食べていってね。ズボンは私が縫っとくから」

「すみません」

「美瑠ちゃんもゆっくりしていってね」

「ありがとうございます!」



笑顔の奈々さんに安心していると「美瑠―!」と手榴弾を持ってランボが走って入ってくる。

イーピンちゃんが慌ててランボを止めているけれど、あのランボが止まるはずなく。
ぴょん!とジャンプして私に抱き着くランボに「何して遊ぶー?」と笑いかけると「殺し屋ごっこ!」と即答。

殺し屋ごっこかーと考えているとツナが「あっちいってろよ!」と怒っていた。

そんなランボたちを見て、炎真君は「にぎやかだね」なんて言っていたけど、ツナにとってはただうるさいだけなようだった。



「明日からはほっといてくれればいいよ。どんくさい僕のそばにいるとまたイジメられるから」

「え!?」

「炎真君、そんな寂しいこと言わないでよ。せっかく友達になったんだから」

「そ、そうだよ!別に気にしなくていいって!オレもよく暴力的なことには巻き込まれるし!ちょいちょいダメなところもあるしさ…」

「……」

「さ、裁縫といえば家庭科の授業で座布団を自分のシャツに縫い付けたことあったよ!」

「そういえばそんなことあったね!」

「美瑠ちゃん、笑顔で肯定されると傷つく…」

「あ、ごめん」



つい、と笑うとツナもアハハ…と小さく苦笑する。

炎真くんの瞳に少しだけ光が灯ったような気がして、心を開いてくれたのかな、なんて嬉しくなる。


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