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朝一で学校に行くと、なぜか学校の校舎に「粛清」と書かれた横断幕が大きくはってあった。
これは一体どうしたの、と驚くと同時に風紀委員の人たちが慌ただしく走っていった。

粛清…そういえば昨日アーデルハイトさんが「粛清委員会」と言っていた。
じゃあこの横断幕は粛清委員会であるアーデルハイトさんがしたってことかな…?

こんなにも派手なことをして、恭弥が黙っているわけがない。この横断幕は恭弥に対する宣戦布告だろう。



「おはようございます、美瑠さん!」

「おはようございます。…恭弥は?」

「応接室にいらっしゃいます」

「アーデルハイトさんも一緒ですか?」

「はい」

「…いってきます」



恐らくアーデルハイトさんと言い争っているだろう。
もちろん、並中の秩序はどちらか、ということで。

中々決着がつきそうにないな、なんて苦笑しながら応接室に行くとそこには草壁さんしかいなかった。



「草壁さん、おはようございます」

「おはようございます!」

「恭弥は今どこに?」

「委員長はあの女子の攻撃を避けながら動いておられます」

「…うーん…やっぱり…」

「なぜ、委員長はあの女子を咬み殺さないのでしょうか」

「…たぶん、女の子だからじゃないかな。風紀を乱す女子には容赦なく咬み殺すけど、アーデルハイトさんは恭弥と同じようにこの学校をよくしようと思っている人。
そんな女の子を咬み殺すほど、恭弥はひどい人じゃない。冷酷な人のようで、実際は温かい人だもの」

「そうですね」



ふふ、と笑いながら肯定してくれる草壁さんに私も笑い返す。

恭弥には強烈なカリスマ性がある。でも、それだけじゃ部下はついてこない。
草壁さんが十年以上恭弥についてきてくれるのは、やはり恭弥の温かさがあるからだろう。…恭弥の温かさはとても分かりづらいけど。

さ、私も行こうかな、と恭弥の気配を探りながら歩き出す。
外にはみんなが登校してきているようで、ざわざわとした話し声が聞こえてきた。

どうやら恭弥は屋上に向かっている様子。

屋上にたどり着いた二人の気配に私も屋上に入ると二人は屋上でにらみ合っていた。
恭弥に話しかけるのは憚られるので、二人の様子を見ていると騒ぎに気付いた隼人と武、そして知らない大柄な男の人が入ってくる。



「美瑠!」

「おはよう、武、隼人」

「止めなくていいのか?」

「やめてって言って止まる恭弥じゃないことは知ってるでしょ?」

「そうだけどよ」



困っている二人に大丈夫だよ、と笑いかける。

大丈夫。いくら恭弥でも、アーデルハイトさんに大きなけがを負わせるようなことはしないはず。


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