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部屋に閉じ込められていると、ふいに突然私の頭の中に過去の記憶が流れていく。
プリーモさまと初代シモンコザァートさんの出会い。
二人とも町のことを思っている素敵な青年だった。そして、誰よりも似ている二人……
こんなにも仲のいい二人が憎しみ合うことなんて、ありえない……
そのあとも、プリーモさまに自警団を作るように勧めるコザァートさんたちの姿が流れる。
やっぱり何かあったんだ、と胸が痛む。
するとトントンと突然ノックされて、外から炎真の声が聞こえてくる。
どうぞ、と声をかけると炎真が朝食を持って入ってきた。
「朝ごはん。食べなよ」
「ありがとう。…ねぇ、炎真。あなたにも流れた?プリーモさまとコザァートさんの過去が…」
「…うん。見たよ」
「私、やっぱり信じられないの。あのプリーモさまが仲のいいコザァートさんを裏切るなんて、」
「裏切ったんだよ。だから、ツナ君のお父さんも…!!」
「え?」
「…っ、何でもない」
「待って!どうして家光さんが出てくるの?炎真、教えて!」
「また後で来るから」
炎真はそれだけ言って部屋から出て行ってしまった。
どうしてここで家光さんの名前が出てくるの…?一体、炎真は何を隠して……
わからないことだらけで、不安が一気に襲ってくる。
とにかく何か手がかりになるものを探さないと、とベッドから降りると「ハロー♪」と高いテンションでいきなりドアが開けられる。
「…あなたは、加藤ジュリー、さん」
「あ、オレちんのこと知ってくれてたんだ。うれしいね〜」
読めない笑みを浮かべながら私に近づいてくるジュリーさん。
でも、なんだかその背に何か大きくてどす黒いものを抱えている気配がして、かすかにひるむ。
怯えた私の気配を感じたのか、ジュリーさんは「さっすが〜」と笑う。
「未熟といえど月の守護者だね。わかるんだ?」
「あ、なた…っ一体、だれ…!?」
「いいカンをしている。私の気配を感じるとは…」
さらさらと霧の炎が現れて、加藤ジュリーさんから…骸に似ている違う誰かになる。
いったい誰なの、と震える声で問いかければ「そんなに怯えずとも危害を加える気はありませんよ」と笑う。
「君は、初代月の記憶を受け継いでいるのですか?」
「初代月さまの…?」
「…その様子では継いでいないようだ。まぁいいでしょう。君は六道骸の大切な人だと聞いた」
「…っ」
「そして、夢を渡って六道骸に会いに行けるとも」
「(どうしてこの人そんなことまで…!骸と私しか知らないはず…!)」
「六道骸に伝えなさい。クローム髑髏と彼方美瑠の命は私が握っている、と」
「…!クロームに指一本触れさせない!」
「ヌフフ!威勢がいいですね!さすが、月の守護者。――ミチルによく似てる」
「え…」
「おっと。口が滑りました。せいぜいそこで仲間の行方を見守っていることです」
一瞬だけ…「ミチル」という名前を口にしたときだけ、彼の冷徹な目に優しさが灯る。
その一瞬を見逃さなかった私は呆気に取られて動くことができなかった。
ミチル…それは、初代月さまの名前……私と、同じ、名前。
炎真がつぶやいた家光さんの名前に、突然現れた加藤ジュリー。
一体どうなっているの…?何が起こっているの?この戦いは、本当にボンゴレとシモンの戦いなの…?
疑問がたくさん浮かび上がっている間に、再び私の頭に過去の映像が流れてくる。
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