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「これ、誰が撃ったの?リボーン?」

「ちげーぞ。ツナだ」

「じゃ、ツナの初めての殺しだね。成功おめでとう!」

「笑顔で言わないでー!」




めでたくもないよ!と頭を抱えるツナ。
人を殺したのにこんなに元気なら頭のどこかでわかってるのかもしれない。

この人が死んでないこと。

やっぱりこれも血なのかな…?

そんなことを考えている間にビアンキが出てきてお赤飯を作るって言い出した。
作ってくれるっていう心は嬉しいけれどそれが人の命に関わるから大変。

本人が自覚なしだから余計に困っちゃうんだよね……

折角作ってくれたのに「ポイズンクッキングだから食べたくない」なんてそんなこと言えないもの。

結局ビアンキはお赤飯を作りに一階に下がってしまった。…被害者が出ないことを祈ろう。




「どうしよ――っ!人を殺めちゃったよ――!」




取り返しがつかないって思ったみたいでツナは本格的に泣き出した。

可哀想だね、ツナ…リボーンの悪戯にかかっちゃって……
その様子に苦笑してニヒルな笑みを浮かべているリボーンにアイコンタクトを図る。

リボーンはすぐに私に気づいてくれて真っ黒な瞳が私を見つめた。

読心術を使える私とリボーンだからできる、心の会話。




“あれはモレッティだよね?”

“あぁ。よくわかったな”

“一度だけ会ったことあるの。あんまり苛めすぎるとツナがグレちゃうよ?”

“グレたらオレが締める”

“わぉ。格好いい!リボーン美学だね”

“…雲雀の口癖が移ってるぞ”




「あっ……」

「……?どうしたの?美瑠ちゃん」

「う、ううん。なんでもないよ」




思わず動揺しすぎて声に出してしまった。
その声がツナに聞こえてしまったようで不思議そうに首を傾げられたけど何とか誤魔化す。

口癖が移ってる……

それはその人と長い時間を共有し、少なくとも心に残っている人だということ。
恭弥とはこの前会ったばかりだから長い時間を共有し、というのは当てはまらない。

ということは、心に残っている…?恭弥、が?

どうして、なんてことは心に聞いてはいけない。


(答えなんて、わかりきってる、から)


浮かんだ答えを無意識のうちに打ち消して一階から上がってくる気配に視線を向けた。




「ツーナさん!見てください!
文化祭の演劇でハル、屋形船やることになったんです!
あ、美瑠ちゃん、おはようございます!」

「おはよう、ハル。すごいね、屋形船。本物みたいだよ」

「ありがとうございます!あ、ツナさん達も劇の練習ですか?
すごーい!リアルな死にっぷりですー!」




大きな屋形船の模型のようなものを被ってきたのはハル。
今日も元気いっぱいでポニーテールがぴょんっと跳ねた。

ハル達も劇をするみたいだから劇の練習だって彼のことを誤解しているみたい。

本当は死んでるんだけど、死んでないんだけどね。

ハルは全然怖がることなく屋形船の着ぐるみを着たまま死体に近寄る。
最初はキラキラした目で見ていたけどツナが泣いてることにハルは不思議そうな顔をした。




「違うよ。お……オレが本当に殺しちゃったんだ」

「はひっ!?」

「あ」




本物の死体だとわかって、ハルが反射的に後退し…屋形船が沈没ならぬ粉砕。
バキッという盛大な音を立てて粉々になった屋形船、だったもの。

いいのかな…?壊しちゃって……

そう聞きたかったけど、ハルが余りにもショックを受けているから声を掛けづらい。
リボーンにどうするの?って目だけで問いかけたけどニッと口の端をあげるだけ。

もう……本当に知らないよ?警察沙汰になっても。

なんて言っておきながら本当のことを言わない私も意地悪かな…?


(ハルとツナには悪いけど、ちょっとだけこの状況が面白かったりするから)


うーん、と苦笑していると私の携帯の着信音がバックの中から聞こえてきた。

携帯を取り出すとディスプレイには“雲雀恭弥”の文字。
どうしたんだろう?今日は休日なのに、と首を傾げて通話ボタンを押した。

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