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Dは炎に包まれ、…一つの懐中時計がその場にからりと音を立てて落ちる。
恐らくDが肌身離さず持っていた、Dにとって宝物。
ツナが静かにその懐中時計を拾い上げるとじっとその懐中時計を見つめていた。
――その懐中時計には写真がはめ込まれていた。
初代ボンゴレの守護者たちと月様と…エレナさんと呼ばれる女のひとが写った写真。
みんな穏やかに笑っていて、幸せそうだった。
それなのにどうしてDはジョット様とは反対ともいえる考えを持ってしまったのだろう。
「私とて最初からT世に反旗を翻していたわけではない。
私もエレナもあの頃のボンゴレファミリーを何より愛していたのだから」
「えっ…じゃあ…なんで…?」
「聞かせてあげましょう。私は貴族だった」
Dの口から語られる、当時のボンゴレのこと。
堕落した貴族たち。地位はなくとも優秀な人間が社会の中心にあるべきだとDは考えていた。
そんなDに共感したのが、公爵の娘であったエレナさんだった。
エレナさんは民衆の人望が厚く、Dと気が合うだろうとジョット様を紹介した。
「ボンゴレファミリーのジョットだ。…彼女は月の守護者、ミチルだ」
「初めまして、Dさん。ミチルです」
「初めまして。よろしく」
あの頃のボンゴレは何もかもが完璧だとDは言った。
市民を守るという大義の下、貴族・無法者・政治家・時には警察、すべての腐敗した者を正していったから。
そんなボンゴレファミリーを愛する中で、エレナさんとの愛も深まっていった。
だけど…ジョット様は迷っていたんだ。これ以上ボンゴレが力をもってしまうのは正しいことなのか。
だから決断した。――これ以上は力をもたずにいようと。
「オレ達は戦争屋でも独裁者でもない。これ以上の戦力は必要ない。
ここからは“私欲”のための戦いになってしまう」
「私は勝ち続けなければボンゴレの存在価値はないと思います。
ボンゴレが強く在り、支配してこそ世の安定が保たれるのです」
「…D、ジョットの考えをわかってあげて。
ジョットの望みはみんなの平和。みんなが力に怯えてしまっては意味がないのよ」
「ミチルまで何を血迷ったことを…」
考え直せ、と何度もDは言ったけど、ジョット様は受け入れず、平和路線へと切り替えた。
しかし、戦力を減らしたことで敵対勢力に狙われてしまうことになる。
…そのせいで、エレナさんは、死んでしまった。
Dの痛々しい慟哭が響き渡る。――そして誓ったのだ。名を聞いただけで震えあがるほどのボンゴレを創ると。
Dの気持ちは痛いほどわかる。その考えに至るまでの経緯も。…でも。
「エレナさんは本当に…そんなボンゴレが好きなの…かな?」
「なっ…何…!?」
「人を怖がらせたり力やお金を使って支配することに、弱い人の気持ちなんて少しも入ってないじゃないか」
「っ沢田綱吉!!貴様にエレナの気持ちがわかるというのか!!」
「え!?エレナさんの気持ち…?」
さらさらとDの体が消えていくのがわかる。苦しそうな呼吸の中で。
そんなDの様子をツナはじっと見つめていたけど、懐中時計をきゅっと握りしめた。
「わかるよ」
「な…なんだと…?」
「エレナさんはお前に感謝してる」
「!!」
「ボンゴレの超直感で感じるんだ。
エレナさんはお前が自分のことをずっと忘れずにいてくれたことに、自分のためにずっと必死に生き続けてくれたことに“ありがとう”って…」
ツナの言葉にDは黙り込み、静かに穏やかな涙を流した。
…それは先ほどの苦しそうな呼吸を楽にするほどの、穏やかさ。
ずっと、Dはエレナさんという愛する人を死なせてしまったことに苦しんでいたのかもしれない。
ツナの言葉に、…少しはDも救われたのかな……
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