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Dとの戦いから数日…復活した骸を追って恭弥はしばらく黒曜に行っていたけど、骸が日本を出たという情報を掴んだらしく「逃げた」と言って帰ってきた。
せっかく咬み殺す機会だったのに、なんて恭弥は不機嫌そうだったけど風紀の仕事もあり、いつも通りのお仕事の日々が戻ってきた。


今日も今日とて忙しく風紀の書類をさばいていると転入生の書類が出てくる。
転入生が来るんだ、なんて考えていると転入生の名前に思わず「え、」と声を漏らした。

――「クローム髑髏」という名前だったから。



「恭弥、髑髏が転入してくるの?」

「…あぁ、そういえば…」

「骸から何か言われた?」

「…いや」

「(どういうこと…?どうして髑髏が…)」



目を通していくとどうやら住所は黒曜ランドのまま。
さらに転入してくる日付は今日。クラスは同じのようだ。

骸が簡単に髑髏を手放すわけがない。それなのに並盛に置くということは何か大きな理由があるのだろう。

きっと髑髏は不安なはずだ。だって、突然並盛に転校することになるなんて……

すぐに立ち上がると「恭弥、」と書類に目を通している恭弥に声をかけると恭弥は書類に目を落としたまま「行っておいで」と笑った。
さすが恭弥。私がしたいことなんてお見通しなのだろう。
ありがとう、とお礼を伝えてすぐに自分のクラスへと向かう。

ちょうど髑髏は紹介されているところで「髑髏、」と名前を呼ぶと髑髏は伏せていた視線をあげて、私に気が付いたかと思うと目を潤ませて私に抱き着いた。



「髑髏…」

「クロームちゃん?どうしたの?」

「…っ」



心配そうに付き添ってくれる京子。
…どうやら髑髏の話を聞いてあげたほうがよさそうだ。

先生に許可をもらうと私と京子、髑髏は教室を出て応接室へと向かう。
応接室に入ると恭弥は一瞬目を丸くしたが、髑髏の泣き顔を見たとたんに事情を察したようで「見回り行ってくる」と出て行ってくれた。

落ち着けるように二人に紅茶を淹れると泣きそうになっている髑髏の背をさすった。



「…一体何があったの?髑髏」

「……朝、起きたらこれと並盛の制服だけが置いてあって…」



差し出されたのは一通の手紙。イタリア語で書いてあるが骸の字であることはすぐにわかった。
内容はただ「出ていくように」とだけ書いてあった。

骸は日本を出た。それは恭弥が掴んだ情報だから確かなはず。

じゃあ一体どこへ…?それに、髑髏を連れて行けない理由って……



「ちゃおっス」

「…!リボーン」



静かに涙を流す髑髏を抱きしめていると窓からリボーンが入ってくる。
小さなトランクを持って入ってきたリボーンは「クロームは大丈夫か」と心配する。

大丈夫か、と言われれば大丈夫ではないのだろう。
その言葉に応えられずにいると「骸に会ってきたぞ」と伝えられる。

その言葉にいち早く反応したのは髑髏。ハッとしたようにリボーンに視線を向ける。



「骸たちは術師のフランを獲得しにフランスに行った。並盛に置いておいてくれだと」

「フランスに…、…まだ部屋は決まってないんだよね?」

「いや、とりあえずの部屋は用意したぞ」

「…そっか…でも、不安だろうし…今日は私の家においで?ね、髑髏」

「…美瑠様…」

「クロームの生活費は預かってるぞ」

「わかった。みんなに髑髏の歓迎会しようって伝えて」

「あぁ、いい考えだなそれ」

「楽しそうだね、クロームちゃん!」

「…うん…」



少しだけ顔色を明るくした髑髏に少しだけ安心して、骸に心の中だけで話しかける。


ねぇ、骸…どうして、髑髏だけおいていったの…?
髑髏の身の安全のため?それとも、足手まといだと思ったの?…まさか、脱獄できたから髑髏は用済み、だなんて思っていないよね…?

…ううん、骸が髑髏のことを用済みだなんて思うはずがない。
だって髑髏は骸にとって憑依できるほど相性のよい相手であり、信頼する仲間のはずだから。

おいていけば髑髏を悲しませることはわかっているはずなのに……


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