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「美瑠」

「リボーン…」



気配もなく現れたリボーンに言いたいことは伝わった気がした。

あの夢は本当にみんな見ていたことなのか、これからどうするつもりなのか。

二人でしばらく見つめあっていたが、私から視線を外し、リボーンの前にしゃがみ込む。



「ツナに頼むの?」

「あぁ。ディーノにも頼んだ」

「そっか。…私は?」

「美瑠はダメだ。…今回は得体がしれねぇ。恐らく、他のアルコバレーノも美瑠にだけは頼まねぇと思うぞ」

「…また、みんなを見てるだけしかできないの?」

「見守ってくれてるだけで十分だぞ」



ぽんぽん、と頭を優しく撫でるリボーンにそっと目を伏せる。

今日ディーノが来るからお前も来い、と言われ、小さくうなずいた。
恐らくツナとディーノにアルコバレーノの秘密をちゃんと話すのだろう。

学校帰りにツナと一緒に行くね、と伝えるとリボーンは緩やかに笑ってその場から去っていく。

アルコバレーノのみんなが戦うのなら大きな戦いになるだろう。
…誰も大きく傷つかないように守らないと。私ができることをしよう。

そう決意していると美瑠、と再び後ろから声をかけられて、ゆっくり振り向いた。



「また何かあった?」

「恭弥…」

「何か決意した顔をしてる」



恭弥の鋭い言葉にかなわないね、と笑うと当然だよ、と少しだけ嬉しそうな顔をする。
…恐らく恭弥も少なからずこの代理戦争に巻き込まれてしまうだろう。

恭弥には事情を話しておいた方がよさそうだと判断し、応接室に行こうと促す。
恐らく長い話になってしまうだろうから、お茶でも飲みながら。そう思って。

応接室へと移動し、お茶を淹れるとアルコバレーノのこと、代理戦争のことを話した。

恭弥は話を聞いて何かを考え込んでいたけど、少しだけ体の力を抜いてソファーへと体を預けた。



「なるほどね…代理戦争、か」

「まだ何も動きはないけど、すぐにみんな動き始めると思う」

「…面白がっちゃいけないんだろうけど、楽しそうだ」

「そうだね。恭弥はいろんな人と戦える機会だと思う」

「いいね」



楽しそうに笑う恭弥に小さく笑い返すと温かい紅茶を再び飲む。

恐らくリボーンはディーノとツナに声をかけるとなると恭弥にもメンバーに入ってもらうことになるだろう。
ディーノにツナ、恭弥がいれば大丈夫だと思うけど……今回は勝ち、負けがあるようには思うことができない。

外をそっと見れば、みんなが帰り始めているのが目に入る。
あぁそっか、もう下校時間なんだ。

ツナと一緒に家に行くとリボーンに伝えているのだから一緒に帰らないと。



「恭弥、今日は先に帰るね」

「そう。用事?」

「うん、リボーンに呼ばれてるの」



気を付けてね、と笑う恭弥に頷くと帰る用意をして恭弥の傍まで行く。
…たぶん、これからの代理戦争のことで気持ちが不安定になっているのだろう。

どうしてか恭弥にぎゅっと抱き着きたくなったのだ。

そっと恭弥に横から抱き着くと恭弥は驚いたように私の名前を呼ぶ。
それでも何かを察したように恭弥は私を抱きしめながら立ち上がり、今度は私がすっぽりと抱きしめられる。
ぽんぽん、と頭を優しく撫でられて心からホッとするのがわかった。



「甘えたい気分?」

「ふふ、そうみたい」

「そう」



しばらくその温かさに浸っていたが、ゆっくりと体を離す。
まっすぐ恭弥を見つめれば穏やかな色をした恭弥の目とぶつかる。

…こうやって傍にいられるって本当に幸せなことなんだよね。

恭弥も同じ気持ちだといいな。

ゆっくりと近づいてくる恭弥の顔に、私もそっと目を瞑る。
落ちてきた優しいキスにふわりと心が軽くなった気がした。



「また明日ね、恭弥」

「またね」



ぎゅっともう一度だけ抱き着いて、荷物を持ち、応接室を出る。
軽くなった足取りに単純だなぁなんて苦笑しながら教室へと向かった。


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