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「やめてくれる、君」
息も浅くなっていると優しい温もりが私を包んでくれる。
大丈夫だよ、と優しく囁かれて、ようやく普通に息をすることができた。
そっとその温もりに体を預けて、…恭弥を見上げる。
「美瑠を苦しめてるのがわからないの?」
「…やれやれ、まぁ…今はいいよ。美瑠君、いつでも歓迎するよ」
「……っ」
「では、諸君らの健闘を祈る」
そうチェッカーフェイスが言い残して通信が途切れた瞬間、私から力が抜ける。
美瑠、と心配そうに名前を呼びながらも恭弥が支えてくれたので、大丈夫と微笑み返した。
大丈夫?とツナたちも心配してくれてうん、と頷いた…けど、本当は大丈夫なんかじゃない。
でも、私のことよりも…スカルの方が心配だった。
スカルの代理になったシモンのみんなも…どんな怪我をしているのかわからない。
バジルが見ていたみたいで、シモンのみんなは救急車で並盛病院に運ばれたらしい。
急いで行こう、というときにユニちゃんが来てくれてバミューダを感じていたことを教えてくれる。
そして、チェッカーフェイスのイメージが現れると…心がえぐられるように、痛むことも……
ユニちゃんの話を聞いて、ぎゅっと拳を握りしめる。
「美瑠、行こう」
「え…あ、恭弥…でも、…私…」
「並盛病院には後で送ってあげる。…とにかく行こう」
恭弥にしては珍しく有無を言わさず私の体をお姫様抱っこしてみんなから離れていく。
どうやら恭弥はここまでバイクで来ていたみたいで、恭弥の背中に抱き着いて移動した。
ついたところは…誰もいない、静かな海。
どうしてここに連れてきたのかと不思議で、恭弥…?と思わず名前を呼ぶと、再びお姫様だっこされる。
そして、優しく砂浜におろされたかと思うと、恭弥も私の隣に座り込む。
「…恭弥…?」
「ここなら誰もいないよ。…暗いから美瑠の表情も見えない」
「え…」
「美瑠が泣きたいときに、傍にいたいんだ。…知らないところで、泣いてほしくないから」
「…っ…恭弥……」
どうして恭弥にはわかってしまうのだろう……
私がどんなに繕っていても私の強がりを見破ってしまうのだから…敵わない。
じわじわと湧き上がってくる恐怖と苦しみに、涙がせりあがってきた。
――怖いんだ。自分の中にある、ナニカが叫んでいる。
ぎゅっと恭弥の体に抱き着いて、小さく嗚咽を漏らす。
恭弥はどうして泣いているのか、とか、泣かないで、とか言うことはなかった。
ただずっと…泣いている私の背を優しく撫でてくれていた。
しばらくして、涙も乾いてきたころ…ありがとう、と言って恭弥から離れる。
「もういいの?」
「うん…おかげですっきりした」
「そう」
「…ねぇ恭弥…」
「なに?」
「……――私は…私だよね?」
聞き方がずるかったかもしれない。
何も詳しいことも言わず、抽象的な聞き方で、…恭弥に「そうだよ」と言ってほしいような言い方だった。
ごめん、忘れて、と言いたかったけど、恭弥は私の頬に手を当てて、優しく撫でた。
「誰よりも強くて…でも、優しくて、甘くて、…弱くて…支えてあげたい。…そう僕に思わせるのは…美瑠だけだよ」
「……、…そっか…ありが、と…」
私にはもったいない言葉だった。
この言葉を覚えている限り…私は、私でいられる気がした。
恭弥に甘く見つめられて、甘い痺れを感じながら私はそっと目を閉じる。
それが合図だったように、恭弥は優しい口づけを降らせてくれたのだった。
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