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ソレが何かわかっていても、僕のくだらない感情がそれを否定する。



10 認められない感情



バイクで校舎の中に入ってついに学校に着く。

恭弥のバイクの運転は思ったより荒くなくて、少しだけ意外だった。
それにしてもバイクって初めて乗ったけどあんなに早く感じるものなんだね。
風がびゅんびゅん耳元で鳴り響くし、多分車と同じ速度なんだろうけど景色が目まぐるしく変わっていくし。

ジェットコースターみたい、なんて思いながらヘルメットを返す。

そういえば恭弥ってバイク登校してるのかな…?今度聞いてみよう。

恭弥はどうしてか学校の鍵も持っていて(彼曰く「当たり前だよ」らしい)誰もいない校舎内に入った。
いつもより閑散としているせいか少し怖く感じる。

……幽霊とか出る、って誰かが言ってたから余計に。

でも幽霊とか出ても恭弥が咬み殺しそう……なんていったって秩序だもの。




「そういえば風紀の仕事、初めてだよね」

「あ、本当だ!」




応接室に入って思い出されたように呟かれた言葉に頷く。
応接室には変わらず黒い革張りのソファーに恭弥専用の机が置いてあった。

恭弥はいつものように自分の机に座ると引き出しの中から……どっさり出てくる書類の山。

すごい書類の数……普通の委員会でもこんなにあるんだ…!
…それとも風紀委員だけだったりして。あ、ありえそう…!

うん、と一人頷いていると恭弥が仕事の手順を丁寧に教えてくれた。

書類に誤字雑字がないか調べて、わかりにくいところがあったら報告書は書き直してもいい。
チェックが終わったら恭弥に渡して恭弥が目を通してサインする。

たったこれだけ、と言われたら少ないかもしれないけどこれが結構大変。

私も一応殺し屋していたから報告書出すことはあったし、ディーノの所にたまに遊びに行ったりしていたからその大変さはよくわかっているつもり。




「美瑠はこの書類纏めてくれる?」

「うん。じゃあパソコン借りていいかな?」

「もちろん」




よろしくね、と手渡された書類の束。
なかなか重い…!でも、これくらいこなさないと。

心の中で気合いを入れ直して早速パソコンと向き合う。

大雑把に書類に目を通して変な表現がないか、曖昧ではないか確かめていく。

うーん……学生が書いているからかな。すごくわかりにくい。

これじゃ報告書の意味ないよ、と苦笑しつつパソコンで綺麗に清書していく。

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