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夕焼けから夜空へ変わる空の中、僕と美瑠はバイクを走らせていた。
と、言っても美瑠は僕の後ろの席に乗っているんだけど。
少しまだ怖いのかぎゅっと掴まってくれる美瑠のためにいつもよりゆっくり運転する。
……いつもなら速度制限も無視して走るんだけどね。
美瑠に道案内を頼みながらバイクを走らせるとここ、と言われバイクを止める。
あ、そういえばここ最近出来たマンションだ。
建設会社がここに作りたい、と許可証を求めてきた書類をぼんやり思い出す。
ふぅん…ここに住んでるんだね。家族と一緒かと思ってたけど、一人暮らしらしい。
ヘルメットを外してバイクから降りる美瑠にバックを渡す。
いつもヘルメットなんてつけないけど…美瑠が乗って落ちたら危ないから、一応。
「ここまで送ってくれてありがとう。
あがっていく?コーヒーと紅茶ならあるよ」
「…………本気で言ってる?」
「…?うん」
お礼に、と無邪気な笑顔を浮かべる美瑠に僕は微妙な顔をする。
だってこれ……喜んでいいのやら、わかんない。
簡単に女の子が男を部屋にいれていいわけ?…まぁ、僕はその辺の男とは違うけど。
美瑠にその…変なこと、とか、する気はないよ。
でも……少し無防備すぎる気もする。いや、警戒されすぎるのも悲しいけど。
美瑠のことだから本当に送ってくれたお礼がしたいだけだろう。
………僕自身、期待してなかったわけじゃ、ない、し。
(僕だって一人の男だよ。悪い?)
「…じゃ、お邪魔するよ」
「うん!」
バイクを端の方に置いて、鍵をすると美瑠に案内されロビーまでついて行く。
まず最初の玄関でパスワードと指紋照合をしてドアを開ける。
流石に女の子一人暮らしとなると親も心配しているのかセキュリティーは万全。
……あれ、可笑しい。それにしては…セキュリティー多すぎじゃない…?
玄関のドアのパスワードはわかるけど…なんでこんなに至る所にロックがあるの?
一つのドアに対して一個はついてるんだけど……
美瑠はここに住んでいるからか一枚のカードだけで全部通っていく。
その多さに唖然としていると美瑠が苦笑を漏らした。
「やっぱり多すぎるよね。過保護なお兄ちゃんが『危ないからな!』って言ってつけたの」
「ふぅん……そのお兄さん、よく分かってるね」
「えっ!?」
だって簡単に僕を家に入れようとしてるし。
その辺が無防備っていうか…危ないというか。
私そんなに鈍いかな…と見当違いなことを呟く美瑠にわからないように笑う。
ようやく美瑠の部屋につくのかやっぱりパス付きのエレベーターに乗って最上階まで行く。
チンッという音と共にドアが開き、広い廊下とドアが立ち並んでいた。
美瑠の部屋は真ん中にあるのか、美瑠は真ん中のドアの鍵を手馴れたように開ける。
「どうぞ、入って」
「お邪魔します」
かちゃり、という音を立ててドアは完全に閉まり、美瑠は慣れたように…って当たり前だけど、靴を綺麗に揃えてからぱたぱたとキッチンへ小走りで向かった。
コーヒー淹れるからソファーに座ってて、と奥から声が聞こえてきたから、うん、と返事をしつつ靴を脱いで部屋に入る。
中は外見通り広くて新築の匂いが残っていた。
かちゃかちゃ、と陶器がぶつかり合う音も微かに聞こえて、僕はテレビの前に備え付けてあったソファーに近づく。
…と、テレビの横の棚に飾られているたくさんの写真が目に入った。
多分イタリアにいた頃の写真……少し幼いのから最近撮ったであろう写真までたくさんある。
全部全部笑っていて、…今の面影がある小さな美瑠はやっぱり可愛く、て。
楽しそうに笑っている写真ばかりだったけど……何故か一緒に映っているのは、男ばかり。
普通がどうなのかしらないけど、女の子と一緒に映っているのは…二枚だけ。
しかも女の子、っていうより女性、といえる人。
…この人は確か以前どこかで…あぁあの小動物達の一人、獄寺隼人とかいう奴の姉だ。
そういえば男の方もみんな年上ばかり。同年代と思われる人間は一人もいない。
その中で一番幸せそうに映っているのが柔和な笑みを浮かべたおじいさんと…若い、僕が言うのも何だけど無愛想な男と三人で映っている写真。
多分年齢的に美瑠のお祖父さん、なんだろうね。…こっちはあの過保護とかいうお兄さん、かな。
お兄さんの方は写真が嫌いなのか―――或いは2人が嫌いなのか―――そっぽを向いている。
他の写真を見てみると一番多く一緒に映っているのは金髪の若い男。
その時の美瑠はすごく楽しそうで…腕組んだりとか、してる。
頭を撫でて貰っている写真や楽しそうに話している写真……まるで、恋人みたい。
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