1



昨日、恭弥を理由もわからず怒らせてしまって、よくわからないまま、涙が零れた。

…私、いつからこんなに弱くなったのかな。

こんなに泣けるほど、心が弱かったはずじゃないのに。


(でも、心のどこかでわかってた)

(…どうして泣いたか、なんて、わかってた、けど)


泣きはらした目に冷たい水で顔を洗ってキッと自分の顔を睨みつける。




「ダメ。…しっかりしないと」




私は、マフィアなんだから。







11 蓋を開ければ意外にも真実は単純で、







「おはよう、ツナ!」

「あ、おはよう」




いつも通りに笑おうとしたんだけど…笑えてなかったみたい。
下手な笑顔にツナの顔が一瞬だけ心配そうに歪む。

ごめんね、心配かけちゃって……私は大丈夫だから。

そんな気持ちをこめて私は笑顔のままで居続ける。
話題は昨日の話になって、少し恭弥のことを思い出してしまい胸が痛んだけど明るく振る舞った。




「モレッティのことなら知ってたよ?」

「なんで言ってくれなかったのー!?」

「リボーンに言うなって脅されて……苦情はリボーンにね!」




ニコリ、と笑ってそう言えば「無理―!」と叫ばれてしまった。

そんなことないと思うよ?
現に私は元リボーンの生徒だったけど今なら少しだけ…ほんの少しだけ、文句を言えるようになった。
……そのまま押し通されてしまうこともあるけどね。

リボーンも私のことを一人前って認めてくれている、と思う。ちょっと、確信はない。




「一人前になればリボーンに苦情が言えるようになるよ」




ディーノは未だに無理だけどね。

と心の中だけで呟けばツナは思いっきり肩を落とした。




「それは一生ありえないと思う……」

「お前が一人前になればいいだろ」

「リボーン、ちゃお!」

「ちゃおっス、美瑠」




神出鬼没なリボーンはいつの間にか塀の上を歩いていて、慣れたように私の肩に乗っかる。
ずしり、と赤ん坊特有の軽くも重い体が肩にかかり、リボーンの髪が頬を擽った。

くすぐったい、と身を竦めるとそっとリボーンが囁くように話しかけてくる。

隣を歩いているツナに聞こえないように。

- 52 -

*前次#


ページ:

back
ALICE+