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「……、待って」
「…!」
ぎゅうっと。包み込むように、優しく後ろから抱き締められて思わず私の足が止まる。
と、同時に鳴り響くのは心臓の爆音。
ドクン、ドクン、と心臓が飛び出してしまうんじゃないかってくらい、打ち鳴らす。
やめて…あんまり近づかないで、こんな風に、抱き締めないで。
誤解しちゃう…勘違いしちゃうよ……、…期待、しちゃうよ……
後ろから抱き締められているから恭弥の表情は見えず。
ただ強くなっていく腕の力に、私は言葉を発せずにいた。
「…本当、なの…?」
「何、が……?」
「……美瑠が、僕のこと好きって…本当…?」
「…っ!聞い、て…!?」
途端にカァッと体温が上昇して頭が真っ白になった。
嘘…恭弥、私の言葉、聞いていたの…!?
私が好きって言ったの…聞こえてしまった、の…?
その事を自覚すると途端に襲うのは羞恥と後悔。
どうしてここまで言葉にしてしまったんだろう……
この気持ちは抑えないといけないって、わかっていたのに…どうして、
「…美瑠、」
「っ!ごめんなさいっ!さっきの言葉は聞かなかったことに、」
「できないよ。…できるはず、ない」
くるり、と体が恭弥の方を向けられて、ガチリ、と恭弥と視線がぶつかる。
正直…びっくり、した。
恭弥の目が…とても優しく、でもどこか照れているような目をしていたから。
その綺麗な黒目に、吸い込まれてしまいそうなくらい……
「僕も好きなんだ、美瑠…君のことが」
「え…?」
「もちろん、一人の女性として」
「………あ、」
ぽかん、と、なんだか、現実味がなくて。
でもどこかストンとその言葉が頭の中に入ってきて。
じわじわと心の中に温かな感情が流れ込んで、唐突に理解する。
―――恭弥も、私と同じ気持ちなんだ。
この心にこみ上げる温かい、どうしようもない『好き』という感情を持っててくれているんだ。
そう思ったら次第に膨らんだ気持ちは、爆発して。
「私も、恭弥が好き…!」
大好きだよ、って。
どうして今まで言葉にできなかったのかわからないくらい、自然と言えていたんだ。
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