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ずっと見つめているのも悪くないけど、さすがに暇すぎるから本をゆっくり読むことにした。
美瑠の寝息と時計の秒針の音、そして僕の本を捲る音だけがその場に響く。
静かな空間…それがとてつもなく心地いい。
一定の寝息を立てていたけど、美瑠も意識が浮いてきたのか「ん…」と身じろぐ。
本から美瑠に視線を落とせばゆるゆると美瑠の瞼が上がっていった。
…起きたようだね。
「あ、れ…」
起きたはずなのにどこかぼぉっとしていて、焦点が定まっていない。
…確か低血圧だって言ってたから…寝起きってこんな感じなのかな。
ぱちぱちと何回か目を瞬かせたがやっぱりぼぉってしている。
その様子が少し面白かったから僕も何も言わずただその様子を観察。
ふわふわーっとどこかに浮いているような目がふいに僕に向かう。
バチリ、と目が合い…やっぱり変わらないトロリ、とした目で僕を見つめる。
…そんなに見つめられると、何となく居心地悪いんだけど……
「…きょうや…?あれ…なんで…?ゆめ…?」
「くすっ」
夢、か。やっぱり寝ぼけているみたいだね。
心底不思議そうに目を瞬かせる美瑠に小さく笑うとわき起こってくるのは悪戯心。
ずいっと唇が触れてしまいそうになるくらい顔を近づけても、美瑠はぽーっとして僕をぼんやり見つめるだけ。
いつもなら吃驚しながら顔を真っ赤にするのに。これはこれで面白いね。
「じゃ、これも夢?」
短い、触れるだけのバードキス。
ちゅ、という可愛らしい音を立てて口づけてニッと口の端をあげれば、ようやく夢でなく現実だと理解できたのかボンッ!と顔が真っ赤に染まっていく。
その様子がおかしくて、くすくす笑えばガタンッと美瑠は顔を真っ赤にして椅子から転げ落ちた。
ふふ、そんなに動揺しなくてもいいのに。
「きょ、きょきょ…っ!」
「クスッ…起きたかい?」
「…っ!…、も…な、んで…っ、…あ」
「思い出した?」
ようやく頭が働きだしたのか美瑠は思い出したような表情をつくり出す。
僕の問いにゆっくり頷いて、恥ずかしそうに俯き続けた。
…椅子から落ちちゃったから床に座るなんて美瑠の体を冷やすね。
ベッドから起きあがり、美瑠に「大丈夫?」と手を差しのべると、美瑠は恐る恐る顔をあげて相変わらず赤い顔のままこくり、と頷いて僕の手に手を重ねる。
少し力を入れて美瑠を立ち上がらせると美瑠の視線が僕に向かった。
「…気分はどう?大丈夫?」
「うん、すっかり」
さっきよりずっと体は軽いし、…まぁ熱特有の倦怠感はあるにしても、気分は美瑠のお陰でいい。
少し体が鈍っていたから適度な運動もしたし。
僕の応えに安心したのかよかった、と美瑠が嬉しそうに微笑んでくれたのもどんな薬より効く。
「…あ。学ラン、私にかけてくれてたの?」
「うん。看病していた美瑠が風邪ひいたら大変だからね」
「(看病した私が熱出したら恥ずかしすぎる…!)ありがとう」
クリーニングに出して返すね、って言ったからいいよ別に、と綺麗にたたまれた学ランを受け取る。
…美瑠は少し納得いかない顔していたけど、僕は別にいいって思ったから気にしなくていいのに。
学ランは机の上に置いてベッドに戻ると、美瑠の視線が下に行き…「え、」と声を漏らす。
あぁ、そういえばそのままにしてたんだっけ?
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