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日本特有のものってたくさんあると思う。
例えば、侍。例えば、お寿司。ほかにも数えきれないほど。

授業参観も、その一つ。





17 授業参観




今日は授業参観日。

日本では初めての体験で、親が子供の授業を見る、ということにとてもわくわくする。
…といっても、私の親はいないし、お祖父様はお忙しい身だから私の様子を見てくれる保護者はいない。
それでも、普段いない人に授業の様子を見られる、ということはとても緊張する。

そして、すっごく楽しみでもあるんだ。




「みんな緊張していることと思うが肩の力を抜いていつも通りの姿を見せればいい。先生もいつも通りミスするからな」




普段は冗談なんて言わずに授業を始める先生も、今日ばかりは冗談を言う。

笑わせて肩の力を抜けさせようとしているんだよね。
先生も緊張しているのかもしれない。

教室が笑いに包まれた後、ようやく授業が始まった。




「じゃあこの問題。今日はあえて数学の得意でない生徒からあてていこうかな」

「えっそれっオレじゃん」

「(ツナ、数学できないんだー)」




隣から聞こえてきた小さなつぶやきに小さく苦笑する。

そういえば、初めて授業に出た気がするなぁ……
いつも恭弥に「仕事手伝って」って言われて、結局授業を受けていない。
イタリアで勉強したところだから、特に受けないといけないわけじゃないんだけど…やっぱり受けてみたいっていう好奇心はある。

(先生も恭弥相手じゃ何も言えないみたいだし)




「山本いってみるか?」

「ちぇ。いきなりかよー」

「(助かった〜山本もできないんだった…)」




やべぇ、とばかりに困った顔をする武に初めての発見。

武も数学苦手なんだね。
ツナも数学苦手って知らなかったし…やっぱり授業にでていないとわからないことが多いなぁ。



「んじゃ、1/2あたりで」




あたりで、ってことはあてずっぽう…!
けど、私が思っていた答えと一致したから、あてずっぽうで当たってるってこと!?
すごいなぁ、勘がいいってうらやましい。

先生は適当に答えたことに「コラ!またお前は当てずっぽうで…」と呆れたように言ったが、ちらり、と教科書を見て言いよどむ。




「ん?いや…正解か」

「イエーイ!ラッキー!」

「いいぞ山本!!」




嬉しそうに笑う武にみんなが楽しそうに囃し立てる。
拍手までわき上がって…そんな武は嬉しそうに笑うからやっぱり武って人望あるんだな、って再確認した。

隣にいたツナも武に感心しているようで、小さく「すげー」とこぼしていた。




「すごいね、武」

「ありがとよ!美瑠」

「いーぞ武!!今夜は大トロだ!!」

「ったく親父〜っ」




武ー!と声援を送る、とても優しそうなお父さん。
武は恥ずかしそうにしながらも、少しだけ嬉しそうだった。

あのお父さんだったから、今の武がいるんだろう。

いいなぁ…ああいうお父さん。
私のお父さんはどういう人だったんだろう。

思わず、自分のお父さんのことを考えてしまった。

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