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そう思いながら教室を出て、小走りで応接室に行く。
バレンタインデーだからってお仕事がないわけじゃないからね。

いつもならお菓子を持ってきちゃいけないっていう校則があるから没収らしいけど、この日だけは風紀委員も見逃しているんだって。

さすが恭弥。女の子の気持ちがわかってるね!

恭弥の懐の深さに感心しながら応接室につき、ドアをあけたがすぐに絶句してしまった。




「なに…このチョコの山は……」




入ってきてすぐに目に入ったのは書類の山…じゃなくて、チョコの山。
どれもカラフルな箱に入っていて、メッセージカードがついているものもある。

もしかして、これって全部恭弥へのバレンタインチョコなのかな?
それだったらすごいなぁ!おいしそうだし、私があげるチョコよりずっとおしゃれ。

そう感心する気持ちもあれば、少しだけチクリと胸のどこかが痛んだ気がする。

そんなことを考えているうちに恭弥が応接室に帰ってきたみたいで私に気が付くと「やぁ」と笑った。




「もう来てたんだね」

「うん。このチョコすごいね」

「……捨てる」

「えぇ!?捨てるの!?」

「うん。僕、チョコ食べないし」

「え……そ、う…なんだ……」




興味なさそうな視線を向けるチョコたちに恭弥が本当にチョコを食べないことを悟る。
…それじゃあ、いらない、よね……
折角作ってきたけれど、恭弥が食べないなら渡すわけにもいなかい。
少しだけ寂しかったけれど、仕方ない、と言い聞かせる。

ツナ達とは違う…大きさから全然違う箱を恭弥にわからないようにそっとバッグの底に沈めた。

恭弥は机の上に置いているチョコを興味なさそうに見やると私にひらひらと見せてきた。




「美瑠、これいる?」

「え!?だ、ダメだよ!」




このチョコの送り主たちの気持ちがよく分かる。
みんな恭弥のことが好きで、気持ちが伝わってほしくてここにおいていったんだ。
そんな子達の気持ちを無下にするようなことはできない。

でも、恭弥にはその気持ちが伝わっていないみたいで、すごく不思議そうに首を傾げた。




「何で?」

「全部食べろとは言わないけど、食べてあげなきゃ」

「いらない」

「…でも捨てないでね」

「別にいいじゃない」

「よくないよ」

「(いいんだよ。僕は、美瑠からもらえればいいから。…なんて言えないけど)

…ま、いいや。仕事、終わらせよう」

「あ、はい!」




恭弥の机の上に置いてあったチョコたちを丁寧に隣の机に置く。
けれど、恭弥にとってはいらないものだから、ぞんざいに投げ捨てたりしていた。
それらも机に置いて、いつものように仕事を始める。

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