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「どうして?」

「…どうして、じゃないよ。僕にはくれないの?僕、彼氏だよね?」

「え、だって恭弥チョコ食べないってさっき……」




お互いその言葉にキョトン、とする。
でも、美瑠の言葉にもしかして、と思い当たることが一つ。

まさか、あの言葉?


『僕、チョコ食べないし』


それは他の女の作ったチョコは食べないっていう意味で美瑠のは別……

…あぁそっか。
美瑠のことだから変な気をつかわせてしまったんだね。

(勘違い、ともいえるけど)




「僕は他の女のチョコは食べないよ。でも、美瑠が作ってくれたチョコは別」

「じゃあ……あげていいの?」

「当たり前でしょ。僕、もらえないかと思ってヘコみそうだったんだけど」

「えっ!?ご、ごめんっ!」




本当に申し訳なさそうに目じりを下げる美瑠にわからないように小さく笑みをこぼす。

もしかして真に受けたかな?…素直すぎるよ。

(でもそこが可愛いんだよね)




「じゃあ…これ……」




バッグからそっと箱を取り出しておずおずと差し出す美瑠に嬉しくて緩みそうになる口を必死で固める。

今、笑ってしまったらかっこ悪いからね。




「…ありがとう。食べていい?」

「う、ん…コーヒー煎れてくるね!」




美瑠は恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながら給湯室へ入っていく。
その後ろ姿を見送りながらもらったチョコのラッピングを丁寧にはがした。

僕がこんなに丁寧にはずすことなんて滅多にない。



「コーヒーどうぞ」

「ありがとう」




ゆっくり箱をあけると……現れたのはチョコケーキにバラをかたどったホワイトチョコ。

チョコレートがこんな風になるなんてびっくりする。
見た目はおしゃれだし、何よりおいしそう。

そのチョコをまじまじと見ていると美瑠がフォークを持ってきてくれる。




「じゃ、いただきます」




チョコケーキをパクッと一口食べてみる。

すると広がる甘ったるさ…甘いね、やっぱり。
でも僕の好みくらいの甘さだよ。

もぐもぐ、と何も言わずに食べていると不安そうな美瑠の目。




「どう、かな…?」

「おいしいに決まってるよ」



にっこり笑うと美瑠も嬉しそうに華やかに笑う。

可愛い可愛い可愛い…(エンドレス)
なんでこんなにかわいいんだろう。

安心したみたいで小さくよかったぁ…って言ってるし。

(僕にはバッチリ聞こえてるよ)




「そんなに気になる?」

「だっておいしくなかったらって…」

「じゃ、食べてみればいいじゃない」

「それは…」




美瑠が口を開けた瞬間、チョコを口の中に入れてあげる。

まさか自分が食べるとは思っていなかったようで、美瑠はもぐもぐしながら目を見開く。
そんなに驚かなくてもいいのに、と小さく笑った。

(あ、間接キスだ)

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