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「貴女が先に私に触れた。正当防衛よ」
「いたっ…離してッ!」
「…うるさい」
はぁ、と溜息をついてぱっと手を離す。
…かなり力を入れすぎたようで郁織の腕に痣ができていた。
その痣のできた腕を抱え込み、郁織はキッと私をキツく睨んだ。
その目さえ、恐くない。
殺気もない、眼力もない、腕力も実力もない、なんて。
本当にひ弱で……可哀想な人。
「殺してやるわ…っ」
「できるものなら」
ふ、と鼻で笑って今度こそ背を向ける。
でも…少しだけ、面白かった、って思ってる自分もいる。
中学の時私は大人しい子を演じていたから郁織の本性を明かすことはできなかった。
いつも上辺だけの会話をして、上辺だけの仲良しを造り出していた。
郁織のカンに障らなかったから、こうやって睨まれることもなかった。
でも今日は……郁織の本性が見れた。
あんなに醜く、嫉妬に狂った女の様を。
嫉妬に燃える女がどれだけ恐いか……このマフィア界では激しい女性が多いからよく知ってる。
そんな女性が私の側にいて、私に敵意を剥き出しにしている。
―――面白いと思わない?
一体何をしてくれるのか…そのひ弱な腕でどんなことを繰り広げてくれるのか。
殺す、と言った彼女の目は本物。…殺気混じりだった。
きっと私を殺すために色々なことをしてくれるんだろうね。
……楽しみにしてるわ、郁織。
緩む口元を映した鏡を見て、小さく呟く。
歪んでいるのは私か、それとも彼女か。
(その問いさえ、可笑しく思った)
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