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「じゃあ、どうしたの?珍しいじゃない」

「逢いたくなったから来ただけだ」

「ふぅん」




適当な相づちだけを打って再び紅茶に口をつけた。
ザンザスのせいで少し、冷えている。…また淹れ直そうかな。
仕方なく紅茶は諦めて一緒に持ってきたオレンジケーキを食べ始める。

あ、このオレンジケーキ美味しい……今度教えてもらおう。

ぱくぱく食べているとザンザスがふいに薔薇から私に視線を向ける。
何?と首を傾げると眉を顰められた。




「何故、あの日踊った?」

「…来てたの、あのパーティーに」

「一応ボンゴレだからな」




以前聞いた話ではザンザスと綱吉はボスの座をかけて争い、ザンザスは綱吉のことを憎んでいるというように聞いていたから来ているとは思っていなかった。
でも、あのパーティーに来ていたならきっともう綱吉のことは憎んでいないのだろう。

確かにね、と頷いて甘くなってきた口の中に冷たい紅茶を流し込む。
少し渋みが出ていたけど…甘かったから丁度良かった。

何故、と言われても私は何もプレゼントするものがなかったから踊っただけ。
別に他意はない。
あえていうならプレゼントするものを考えるのが面倒だったから、か。

別に、と応えれば不機嫌さが増してしまった。




「てめぇは全く自分をわかってない」

「あら、XANXUSよりはわかってるつもりよ?」

「……わかってねぇな、」

「……っ!?」




ガッと腕を掴まれたかと思えばそのまま椅子から落ちて…ザンザスに組み敷かれる。

何なんだ、この状況は……

そうザンザスを見上げれば、赤い目が私を見下ろしていた。
グッと強く手首を握られているせいか、押さえつけられている部分がひりひりと痛む。
ザンザスと私は無言で睨み合って、視線を絡み合わせた。

ザンザスの真意は、読みとれない。



「お前は、女だ。オレの腕をふりほどけない、か弱い、な」

「…っ、XANXUS!」




悔しかった。…むかついた。本当のことだから。
私は所詮、女だった。
郁織のことをいくら弱いといっても私も男の前では女の力にすぎない。

嫌だった…ずっと、男に力負けするのが。
これが“男”と“女”の差かと思うと悔しくてしょうがなかった。

それを面と向かって言われて、頭に血が上らないわけがない。
きつく睨めばザンザスは変わらねぇな、と口の端をあげて、掴んでいた力を緩めた。
…弛めただけで、離されたわけじゃないけど。




「覚えておけよ。いくら強くても…お前は女だ。
だから、人前で男を寄りつかせるようなことはするな。いいな?」

「……、…わかった…」




あまりにも諭すような、ザンザスにしては優しい声音だったから、思わずしぶしぶと頷いてしまった。
その反応に満足したのかザンザスは軽くおでこにキスを落として体を離す。

貴方は過保護な兄か、と嫌味を言ってやりたかったけど、心の中にだけにしておいた。
過保護かどうかは知らないけど…兄みたいな存在なのには変わらないし。
これでも私のことたまに、本当にたまに、心配してくれるし。

再び椅子に座って紅茶を一口飲む。……やっぱり、苦かった。



兄と呼んでみたい、彼
(一体どんな顔をするのかな?)

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