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――――ガリッ


「……つっ…」

「いい加減にして!」



つぅっと綱吉の唇から真っ赤な血が流れ出す。
思いっきり私が噛んでやったから、自然と唇も離れていった。
あぁもう、私の口の中まで鉄の味がする。

息が切れるけど、思いっきり睨んでやればバンッと綱吉の両腕が私の両脇を塞いだ。

綱吉の表情は、見えない。




「…お前もかよ……」

「何言って…」

「お前も、オレを否定するのかよっ!?」




顔をあげた綱吉の表情に思わず、息を飲む。

――――泣いていた。


綱吉は、綺麗な琥珀色の瞳から透明な雫をいくつも、流していた。
こんなにも、綺麗な涙を…止まることをしらないように。
ぎゅうっと胸が締まるような思いが私を襲う。

綱吉は…己を否定されることを、怖れている。…自分が自分じゃなくなりそう、で。
温もりを、―――愛情を、求めてる。

(わかる…昔の、…雲雀さんを諦める前の私と、同じ目をしてる…)



「オレを、否定、するなよ…お前だけ、は……」

「綱吉……」

「…愛してるんだ……ずっと、翠徠だけを、愛してた…」

「……っ、」

「オレを…拒絶、しないで……」




そっと、ゆっくりと、キスが降りてくる。
ちゅ、と何度も何度も、角度を変えて、触れるだけのキスが繰り返される。

もう私は…綱吉を“拒絶”しない。
受け入れるよ……これで、綱吉が私の二の舞にならないのなら。

……それが、どれだけ残酷か、わかっているけど。
“愛する”ことはできないけど…“受け止めて”あげることはできる。

いつの間にか綱吉の腕は私を抱き締めていて、私と綱吉は倒れ込むようにベッドに沈む。


何度も、何度も、名前を呼んで。

何度も…愛してる、と囁かれて。


振りほどこうと思えば簡単に外れる優しい束縛に身を委ねながら、熱くなる体を抑える。




「愛して、るっ…翠徠…!」

「…つな、あっ、よし…っ」

「好き、だっ…」




……ごめんね、綱吉。
その言葉には、応えられなくて。
私が……人を愛せなくて、ごめんね。


貴方だけは―――私のように、ならないで。



貴方の穏やかな幸せを
(心から、願っています)

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