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はーい、と声を掛ければ失礼します、とシェフがいい匂いを漂わせた朝食を持ってきてくれる。
あぁもう本当にお腹空いちゃった。




「いつもありがとう、シェフ。
ごめんなさいね、二つもいきなり作れだなんて」

「いいえ。作りがいがありました」




今日はお嬢様が好きな鮎の塩焼きですよ、と言われてお腹が鳴るかと思った。
鮎の塩焼きは新鮮じゃないと美味しくない。つまり、旬の時期じゃないと食べられないのだ。
だから普段滅多に食べれない鮎にぱぁっと自分でもわかるくらい顔が明るくなる。

少し近づいただけでもご飯のいい匂いがおみそ汁の匂いと交じり合って鼻孔を擽った。

はぁ……いい匂い…早く食べたいわ……

その香りにうっとりしているとシェフは嬉しそうに笑って出ていった。

綱吉、早く出てきてくれないかしら。
こんなに美味しそうなのに冷めたらもったいないわ…

そんな私の念が届いたのかいいタイミングで綱吉がシャワー室から出てきた。




「いいところに出てきた。
さっきシェフが持ってきてくれたの。早く食べましょう」

「わぁ…久しぶりの和食……」

「あら、そうなの?」




本部ではイタリアンしか出ないよ、と苦笑する綱吉に心底同情する。

だって日本食ほど美味しいものはないのに……
ボスなんだから和食を作れるシェフを雇うことくらい簡単なはず。
守護者の殆どが日本人なんだから損はないはずだけど。

このご飯の香りがいつも感じられないなんて私には無理ね。

頂きます、と手を揃えてお箸を持ち、鮎をほぐす。
ほぐせばさらに鮎の塩の匂いが漂って…うん、幸せ。

やっぱりこの時間が一番幸せだわ……



「美味しいでしょ?」

「うん…美味しい…!」

「よかった」




何となく、元気になったみたいだし。

私が密かにお気に入りにしている浅漬けを食べて、満足そうに頷く。
ボンゴレの屋敷内ではきっと綱吉は“沢田君”の顔を見せられないだろう。

ボスが故に、いつも毅然としていないといけないから。…同じボスだから、わかる。

だから少しでも綱吉がここの屋敷が心の安らぎ所になればいい。


自分の忘れそうな『素』の自分を保つために……



忘れかけたモノ
(私は忘れたけど、彼には忘れて欲しくない)

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