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「…翠徠、まさか……妬いたのか?」

「違う」

「……っ、…」




隣で動揺するような気配を感じて目を開ければ、黒が画面一杯に広がる。
それに…温かな腕が、私を包み込んでいた。

何で抱き締めてるの、と聞きたかったけどリボーンが顔を嬉しそうに緩めていたのが一瞬だけ見えて。


あぁもうそんな顔しないでよ。…私に、期待しないで。

わかってるんでしょう、知ってるんでしょう。…なんで、そんな顔するのよ。




「…愛してる…すげぇ、愛してる」

「……、………」




やめて、そんな、本当に愛おしそうに囁くのは、やめて。

苦しくなる。…愛してあげられないって、言えなくなる。…やめてよ。


そう思っているのに私の腕は意志に反してリボーンの背中にまわっていた。


好きじゃない、…好きなんかじゃない、好きになんて、なれない。


そう頭の中でずっと言い聞かせていればゆっくり車が止まった。
着いたな、とリボーンは名残惜しそうに体を離しながら呟く。
するとすぐにボンゴレのボーイがドアを開けて私とリボーンは車から降りた。
とたんにうるさくなる聴覚にむっとしたけど、リボーンが差し出した手にしょうがなく手を重ねる。

リボーンと私はいわば門外顧問とは違うボンゴレのナンバー2。

もちろん顔パスで通り、ホール内に入ると突き刺さるのは視線、視線、視線。


羨望、嫉妬、憎しみ、怒り、欲望。

そんなものがたくさん私たちに…特に女性の嫉妬は私に向けられて、息が詰まりそうだった。

これだからパーティーなんて碌な物じゃない、と内心毒づく。




「翠徠、リボーン」

「ツナか……もう挨拶は終わったのか?」

「まぁね、媚びてくる奴らの挨拶なんて覚えてないけど。
ていうかここぞとばかりに自分の娘を薦めてくる奴殺したい。
…翠徠がオレの婚約者になってくれれば万事解決なんだけどなー?」

「迷惑だからやめて」

「死にてぇのか?ツナ。翠徠はオレの嫁になるんだよ」

「ならないから」




この2人、本当頭大丈夫かしら。


私なんかを婚約者にしたってメリットなんて存在しないのに。
…まぁ、確かに私も一応一ファミリーの当主なんだから結婚はいつかしないといけないけど。

それはきっと政略結婚で、愛なんてどこにもない結婚だろう。
私としてはそっちの方が助かる。…恋愛結婚、なんて無理だから。

未だに黒い笑顔対決をしている2人に呆れながら骸の姿を探す。

もしかしたら来てないかもしれない……マフィアが大嫌いな彼だから。

案の定、特徴的な藍色の髪はいなくて。

仕方ないか、と一つ息をつき、未だ不毛な争いをしている2人を眺めていれば、



「何してるんだい、二人して」



私と同じ呆れ顔の雲雀さんが、現れる。

パーティーという華やかな場所だからか珍しく彼は黒ではなく紺色のスーツを着ていた。
この色も似合うな、とぼんやり思っていれば二人して雲雀さんに目を向ける。
こんばんは、と笑う綱吉とリボーンはちゃおっス、とお決まりの挨拶を口にした。
私は無言で頭を下げると一瞥がこちらにきたが何も言われない。



――――この時、気づくべきだったんだ。


彼女が…郁織が雲雀さんの隣にいなかったことに。



後悔先に立たず。
(なんて、昔の人は的確なんだろう)

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