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「流石ヒットマン。こんな時まで銃を持っていたのね?」
「一体何のために私を呼び出したの?」
少し強めに言ってみれば、郁織の笑顔が歪む。
どこか狂気を帯びた……危険な、エミ。
その笑みに小さな違和感を覚えて神経を指先にこめた。…いつでも、発砲できるように。
でも綺麗に口元をつりあげて、郁織は言い放った。
「貴女に、死んでもらうため」
「……っ!?」
パシュン、と無音で私がいた所に銃弾がのめり込む。
あと一瞬気がつかなかったら確実に私にあたっていた。
素早く発砲してきた方角を見れば何人かの男が私に銃を向けている。
……あれは、暗殺専門ヒットマン、か。
ちっ、と小さく舌打ちして撃ってくる銃弾をよけ続ける。
この殺傷力の弱い銃じゃあの高いところまで届かないし、届いても殺すまでには至らない。
こんな時に愛銃を使えればいいんだけど……今は足につけているのを使うわけにはいかなかった。
今日の愛銃にはサイレンサーがついていない。つまり、発砲すれば銃声がこのパーティー会場に響き渡ってしまう。
そうなるとパーティーは一気にパニックに陥り、ボンゴレの名に傷をつけてしまうことになる。
別にボンゴレがどうなろうが私に関係ないのだが、自分の私事でボンゴレに貸しを作ってしまうのが嫌なだけ。
飛んでくる銃弾をさけながら郁織に標準をあわせて、引き金を…
――――ザシュッ
「……っ、くっ…」
なんて失態だ。
郁織に気を取られている間に、銃弾がかすってしまった。…普段なら絶対にしない。
じゃあどうして、なんて愚問だった。
―――リボーンに貰ったカクテルが私が思っている以上に強かったからだ。
動いている間にお酒が急速に体に回ってしまって、一瞬反応が遅れてしまった。
でも……こんなの、ただの苦しい言い訳だ。
あまりの初歩的なミスに再び大きな舌打ちをするとドレスの端を破いて止血する。
幸い傷は深くないけど……、……っ!?
ぐらり、と視界が歪み、突然の強い眠気が私を襲う。
お酒が入ったからこんなに眠くなるはずない……と、するとあの銃弾は睡眠弾かっ…!
寝てはいけない、と何度も言い聞かせるけど私の体はもう動かず、ばたり、と無様にも倒れて意識が朦朧とする。
くそ…っ、もう最悪すぎて口が悪くなる。……最悪最低。
こんなところで死ぬなんて……しかも、郁織の前で。悔しくて、仕方ない。
(…でも、)
(もう…いい、かな)
よくよく考えれば私が生きる意味はあまりない。
死んだらファミリーは後継者を探すのが大変かもしれない。…部下達は悲しんでくれるかもしれない。
けど……ボンゴレにはあまり影響はないし、…リボーンはいつも通りだろう。
私一人が死んだって何一つ変わらない。
なら……もういいんじゃない?…天国には確実に行けないけど、この世にいるのも、疲れた。
そう思うと自嘲が漏れて。簡単に、自分の命を諦めることができた。
「―――……」
気を失う前。
どうしてか自然と彼の顔が浮かんで。
無意識のうちに名前を呟いていた。
(その声は決して届くことは、ない)
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