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こつり、こつり、誰かの靴音が聞こえる。
誰か、なんて興味もなく私は浮かび上がりそうな意識を沈ませていた。
自分が死んでいないことに不思議に思いながら、背中に当たるふわふわの感触に質のいいベッドだな、とぼんやり思う。
翠徠チャン、と低くない…どこか無機質そうな声が聞こえてきて怠くて開けたくない目を無理矢理開けた。
ぼやける視界…何度か目を瞬かせれば視界がクリアになる。
一番に思ったことは……白い。…病院?って思うほど、白い。
キングサイズのベッドの側に誰かが立っている気配がする。
そちらにゆっくり目を向ければやっぱり白の男が立っていた。
―――郁織と一緒に。
「目が覚めた?翠徠チャン」
「……誰…」
「そっか!翠徠チャンとは初対面だもんねー」
知らないのは当たり前かー、と無駄にニコニコする白男。
髪も白いし、着ているスーツも真っ白。…唯一白じゃないところは紫色の目。
白だらけだからか、温かさとどこか冷たい印象を受ける。
私は体の筋肉全部使ってゆっくり体を起こしてみた。…かなり、体が重い。
倦怠感で億劫になったが郁織がいるため意地でも体を起こした。
白男は「無理しないほうがいいよ」って笑ったけど。
その言葉を無視して体を起こし、―――驚愕。
ジャラリ、という鎖の重い金属音と冷たい感触が足と腕に感じた。
両足両手首……鎖で繋がれている。逃がさない、とばかり、に。
辺りをよく観察してみれば窓は防弾のはまりガラス。ドアは白男の後ろに一つだけ。
本当に逃げ場も逃げ足もない。……監禁、されている。
郁織がこの得体の知れない男と一緒にいる理由は……どうでもいい。私は関係ないことだ。
とりあえずこの男は誰か、はっきりさせようか。
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